競争力を生む攻守のバランス

肌、身体、心の関係性を科学的に解明する資生堂の研究は、国際的にもあまり例を見ない。同社の東條洋介チーフテクノロジーオフィサー(CTO)は「肌、身体、心の科学は、長く難題とされてきた」と語る。ウイルス対応を例に取れば、西洋の考え方はウイルスそれ自体を攻撃する一方、東洋では身体の免疫力を引き上げることを重視する。この考え方の違いは古くから知られていたものの、肌領域での体系的研究は進んでいなかった。「ただ、人は疲れれば肌の調子が崩れることを肌感覚として知っている。その関係をビッグデータで立証しようと取り組む企業は、今のところ当社だけです」と東條CTOは胸を張る。皮膚科学、感性心理、測定・解析技術、データサイエンスを横断的に組み合わせ、通常では捉えにくい肌、身体、心の状態と関係性を可視化。それをもとに、新カテゴリー開拓や新ビジネス基盤づくりに挑んでいる。

なぜ資生堂だけなのか。それは150年以上も化粧品研究を続けてきた企業だからだ。化粧品研究の中心は薬剤と処方。それぞれ薬理・薬学、物理化学と学問領域が異なり、化粧品研究者は、領域の壁を越えて結び付け、価値を生むセンスが問われる。「近年、大学でも異分野融合が注目されていますが、化粧品はその最たるもの」と東條CTOは説明する。不断の化粧品研究を続ける資生堂は東洋と西洋の知を結び付け、独自の研究領域に踏み出せたのである。

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