美と健康の探求を続けて140年の桃谷順天館は、横浜国立大学大学院岡嶋克典教授の協力を得て、スキンケアに関する革新的な発見をした。20~50代の女性60名を対象に実施した画像解析による肌年齢分析調査の結果、スキンケア製品をテクスチャー(使い心地)で選んでいる女性は、効果や成分などを重視する女性よりも、肌年齢が実年齢よりも有意に若いことが判明した。同研究成果は、スキンケアにおける“感性”の重要性を裏付けるものであり、今後の製品開発や消費者行動に新たな指標をもたらす、業界注目のエビデンスとなることが期待される。
近年、SNSなどの普及により、消費者はかつてないほど多くの製品情報に触れる機会が増加している一方、情報過多による「選択疲れ」も社会問題として浮上している。また、新型コロナウイルス感染症の流行を経て、心地よさや癒しを求める「セルフケア意識」の高まりとともに、使用体験そのものを重視する消費行動への転換が見られている。このような社会背景と桃谷順天館の使命を踏まえ、実際のスキンケア製品選びの基準が肌状態にどのような影響を与えるのかを科学的に検証するため、五感情報工学の第一人者である横浜国立大学大学院環境情報研究院の岡嶋克典教授の監修の下、実験を実施した。
同研究では、20~50代の女性60名を対象に画像解析による肌年齢分析を実施し、スキンケア製品の選択基準別に肌状態を比較検証した。その結果、テクスチャー(使い心地)を重視して製品を選んでいる群は、効果や成分などの他の要因を重視している群と比較して、実年齢と肌年齢の差が有意に若く、より良好な肌状態を維持していることが明らかになった(図1)。

図1.スキンケアの選び方による肌年齢と実年齢の差
また、異なる使用感を持つA~Eの5種類のローションを用意し、参加者の選好と肌状態(水分蒸散量、水分量、皮脂量、弾力など)の関連性を分析したところ、以下のようなテクスチャーの選好と肌状態の特徴の関係が確認された(図2)。

図2.テクスチャーの好みと肌の水分蒸散量
A:水分蒸散量が低く皮脂量が多い肌状態の方が選好する傾向
B:水分量・水分蒸散量は標準値内で皮脂量が少ない肌状態の方が選好する傾向
C:水分蒸散量が多く水分量が低い肌状態の方が選好する傾向
D:水分蒸散量・水分量ともに多い肌状態の方が選好する傾向
E:水分蒸散量が低く皮脂量が標準的な肌状態の方が選好する傾向
この結果は、各個人の肌状態に適したテクスチャーが直感的に選ばれている可能性を示唆している。
また、参加者のテクスチャー選好によるローションとクリームを1か月使用することで、水分量が有意に増加し、肌状態が改善することが分かった(図3)。
同時に実施したアンケートでは、テクスチャーを選ぶことに「面倒さ」を感じた人はわずか10%以下にとどまり、90%以上の人がそのプロセスを前向きに受け入れていることが分かった。
さらに、面倒さを感じた参加者全員が肌状態の改善を実感しており、テクスチャーで選ぶスキンケアの可能性と、幅広いユーザーへの効果実感を示す結果となった。
同研究結果により、スキンケアを「好きなテクスチャー」で選んで継続使用することで、肌の保湿機能などが改善され、肌状態が向上するということが明らかになった。
今回の調査結果は、消費者のスキンケア選びに新たな視点をもたらすものである。情報に溢れた現代において、成分や効果だけでなく、実際に使って心地よいと感じる製品を選ぶことが、結果的に肌の健康につながることが科学的にも立証された。桃谷順天館ではこの成果を美容業界にとっても非常に価値のある発見だととらえ、この知見を活かし、科学的根拠に基づきながらも使い心地にこだわったスキンケア製品の開発を進めており、2025年6月末には新しい製品ラインを発表する予定だ。
【横浜国立大学大学院岡嶋教授コメント】
「これまではスキンケア製品のテクスチャーの好みは単なる『好み』と考えられていましたが、実験の結果、自分が心地よいと感じるテクスチャーを選んだ人ほど、肌年齢が若くなることが分かりました。さらに、好ましいと感じるテクスチャーを使うことで肌の状態も良くなることが確認され、これは『自分にとって気持ちいい』と感じる感覚が、肌にとっても良い影響を与えることを示しています。また、テクスチャー選びはほとんどの人にとって『面倒ではなく、楽しめる』行動であることも分かりました。自分の感覚に基づいて製品を選ぶことが、美しさを引き出すうえでとても大切であり、感性工学を生かすことで新たな可能性が広がることを期待しています」