I-neと佐賀大学は、共同研究「Vitamin Cの皮膚浸透性に対する炭酸の効果」の成果を2025年5月22〜24日の日本薬剤学会第40年会にて発表する。
炭酸は皮膚に対し、角層のバリア機能維持、乾燥防止、肌荒れ抑制などの効果が確認されている。また、ヒト皮膚線維芽細胞を用いた実験では、炭酸が真皮中のコラーゲンやヒアルロン酸の産生を増加することが確認されている。しかし、化合物の皮膚浸透促進性については十分な研究が行われていない。そこで本研究では、異なる炭酸濃度における化合物の皮膚浸透性を評価し、炭酸の新たな機能性を検討することを目的とした。
炭酸と併用して用いる化合物としてVitamin C(VC)を用い、炭酸濃度0/1000/5000/10000/20000ppm(mg/L)の炭酸水溶液に2%のVCを溶解した計5種類の試験溶液をサンプルとした。まず、各試験溶液の炭酸濃度をポータブル炭酸ガス濃度計で、pHおよび電気伝導度をpHメーターで4時間まで測定し、次にフランツ型拡散セルを用い、三次元培養皮膚を介した透過試験(25℃、4時間)を実施し、VCの皮膚浸透性に対する炭酸の影響を評価した。
サンプル溶液中の炭酸濃度を測定した結果、1000ppmの炭酸濃度は約900ppm、5000/10000/20000ppmの炭酸濃度はいずれも初期値が約2200ppmであり、経時的に減少した。また、pHと電気伝導度はすべてのサンプルでpH4、0.5S/mを示し、炭酸濃度による大きな差はなかった。三次元培養皮膚を介した皮膚浸透試験では、炭酸濃度の上昇に伴いVCの皮膚浸透量が増加した。5000ppm以上では水溶液中の炭酸濃度やpH、電気伝導度に差が見られなかったことから、サンプル中の炭酸ガス量がVCの皮膚浸透性に寄与している可能性が示された。
VCは、美容・スキンケアの領域で広く認知された有効成分であり、昨今のスキンケア製品に多く配合されている主要な成分の一つだ。VCをはじめとする水溶性成分の課題は、皮膚バリアを通過させ、その効果を最大限発揮させることだった。これまでにI-neは炭酸がVCの経皮吸収を促進する可能性を明らかにしてきた。一方で、炭酸が皮膚を通じて有用成分の吸収を促進するという概念は、あまり知られていなかった。そのため、本プロジェクトでは、炭酸の経皮吸収メカニズムを科学的に解明することで、炭酸が持つ皮膚透過促進剤としての可能性を追求し、ビタミンと炭酸の相乗効果による美容効果の最大化を検討している。
本研究成果は、学会や学術誌での公開を通じて、社会への知見を共有することにより、美容科学の分野におけるさらなる研究とイノベーションの促進を促しつつ、最終的には、研究で得られた知識を基に、VCだけでなく、水溶性成分やそのほか皮膚に透過しにくい有用な成分を効果的に配合した新しいスキンケア製品の開発を目指す。同社ではスキンケア製品に留まらず、広範な美容技術およびサービスに応用されることで、業界全体の価値向上に貢献していく。