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2025年も化粧品専門店の初売りは活況を呈している。とりわけ目立つのは、粧苑すきや(宮城県)である。初売りの期間は1月2〜4日の3日間。2桁増収の売上高は過去最高で、3億円(商品券を含む)に肉薄した。同社の強みはLINEの友だち数が10万超など、右肩上がりに増加する会員と直にコミュニケーションが取れること。例年と同じように、12月に事前予約に取り組み、売り上げを確保。年明けの店頭は、福袋受取専用カウンターの設置や抽選会のデジタル化などで一段とオペレーションの簡素化を進め、会員に新客を加えた大勢のお客を滞りなくさばいた。「数字は大きくなってきたが、同じ方針を泥臭くブラッシュアップしています。その地道な努力の積み重ねが売り上げとして大きく返ってくるのがうれしい」と由佐憲靖取締役は破顔する。

初売りが好調だったのは、粧苑すきやに限った話ではない。広島県のLOOKは、駅直結SC内のさんすて福山店が前年比120.5%、市内のSCに入るフジグラン神辺店が同125.7%の大幅増収をたたき出した。その他、大野屋(福島県)は同114%、とらや(埼玉県)のギンザビビ岩槻店は同124.3%、光広(岐阜県)のHIROSEYA with @cosmeは同137%、マルタ(神奈川県)のマルタジョイは同116.8%、かもじや(大阪府)のリノアス店は同135%、甲州屋山田商店(長野県)のコスメティックニュース甲州屋は同110%、K’s企画(兵庫県)のサロンドコスメPAXは同117.6%など、2桁増収の化粧品専門店は多い。

「化粧品専門店にとって年末年始は書き入れ時だが、販売スタッフの確保が難しくなっている」とは、リバース(静岡県)の坂原泰弘社長の指摘だ。そのため、粧苑すきやのように、オペレーションの効率化を進めた店が少なくない。

リバースは売り場の前面に福袋の特設コーナーを設置し、入店導線を制限。さらに会員に12月の事前予約を促すとともに、受け取り期間を1月8日までに設定することで、お客が正月三が日に集中しないように工夫を凝らした。Merchant(北海道)のmy cosmetic house CURE店はカウンセリングコーナーの椅子をすべて撤去。接客時間を短縮することで、アプローチの時間を確保した。「次回の来店約束につなげることもできた」と寺西美穂社長は説明する。

岐阜のHIROSEYA with @cosmeも、福袋の商品はブランドが際立つショッパーに入れ、遠くからでもお客の目を引くように福袋集積売り場を構築し、集客力をアップ。それと同時に「売れ筋商品のセットをつくり、初めての方でもセルフ購入できる仕掛けを施した」と広瀬史貴社長は説明。Kコスメ・ボーテ(富山県)のファボーレ店は、25年から会員の福袋の受け取りは24年中に変更。1月1〜5日の初売りはフリー客中心に切り替え、リピーター育成の接客に時間を割くことができた。「会員さまとフリー客さまを分けたことで、特に元日は慌てずにしっかり応対できました」と林里香店長は胸を張る。

一方、約30社の専門店に初売りの売れ筋商品を尋ねると、コスメデコルテ(コーセー)が引き続き好調を維持している模様だ。しかし、クレ・ド・ポー ボーテ(資生堂)、KANEBO(カネボウ化粧品)、薬用スキンコンディショナー(アルビオン)など、多くの高級ブランドが売り上げ上位に入り始めており、コスメデコルテの牙城を脅かし始めている。

初売りで消費者の財布のひもが緩んでいたこともあるだろうが、高級化粧品への堅調なニーズは25年も続いている。寺西社長は「各ブランド共通ですが、スキンケア5点セット(クレンジング、洗顔、化粧水、乳液、美容液など)が昨年よりも売れ、客単価が上がりました」と振り返り、化粧品専門店に追い風が吹いていることを示唆。香りや感触、応対接客など、高級化粧品の商品特性を考えると、ECが広がってもリアルで買う価値を失うことはない。地域のお客をがっちりつかむ化粧品専門店は、一段と活気づくに違いない。

月刊『国際商業』2025年03月号掲載

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