日本企業が抱える未解決の課題

日本の化粧品産業にとって中国市場は悩ましい存在だ。安全、安心の代名詞として化粧品は爆買いの対象になり、コロナ前は高価格帯、中価格帯、低価格帯を問わず、あらゆる日本製の商品が飛ぶように売れた。訪日客に売り込み、中国本土でも購買してもらえる。これが日本企業の十八番の中国戦略だったが、2020年のコロナ以降はこの好環境は一変、通用しなくなる。訪日時の接点を失った日本ブランドは、中国本土で存在感が後退。中国人の自国ファーストの考えも広がり、ローカルブランドの急成長に押されている。これは欧米も同じ状況だが、日本固有の逆風として23年に福島原発処理水問題がある。日本製品の売れ行きに強く影響を及ぼし、反転攻勢の機を失した。しかし、中国市場14億人の需要は無視できない。だから、資生堂、コーセー、花王、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)など大手各社は中国戦略の転換を開始。薄利多売から脱却し、利益重視のブランドビジネス強化に動いている。

戦略転換の成否は、日本特有の問題を乗り越えることにかかっている。20年以降、旅行者の激減で東アジアの免税店が卸売を強化。インフルエンサーへの商品供給源になり、CtoCの代理購買は盛り上がった。目先の数字が欲しい日本企業は免税店への出荷を緩めず、これが今に続く経営課題になっている。ローカルブランドに押され、日本ブランドの需要は落ちているのに、出荷を続けたことで流通在庫が極端に増加。日本で新商品を発売しても、海外の売り場に並ばず、消費者に訴求できない悪循環に陥っている。各社ともに出荷抑制を行い、流通在庫の最適化に取り組んできたが、いまだに終わっていない。コーセーは24年12月期第3四半期決算で特別損失を計上して在庫処理を行ったが、対象は社内の在庫。流通在庫は引き続き出荷抑制での解消を目指す。花王は24年内に完了する見込みとしているが、予断を許さない状況は続く。

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