オムロンヘルスケアは2024年11月28日、「血圧計の技術革新が拓く、脳・心血管疾患予防の新たな可能性―次世代血圧計で目指す不整脈の早期発見―」のテーマで、メディア向け新技術発表会を開催した。
血圧測定は、かつての「病院で測ることが当たり前」だった時代から大きく変遷し、今では家庭における血圧測定が一般化。大迫研究などの大規模な疫学研究などから家庭血圧の臨床的価値も確立、診断においても重要な位置を占めるようになっている。
血圧計自体の「測定精度」や「使いやすさ」も、デジタル血圧計からオシロメトリック法、さらにはファジィ技術などさまざまな改良が積み重ねられてきたが、それはあくまで「血圧」という、「心臓から送り出された血液が血管を押す圧力」の測定に関連するものだった。
オムロンヘルスケアは、血圧測定技術の革新をさらに進め、血圧測定の際に同時に得られるバイタルデータを解析することで、リスクの高い「脈の乱れ」を検出することに成功。単に「血圧」の測定にとどまらず、その一歩先の脳・心血管疾患イベントの予防にまで、血圧計の有用性、可能性を広げるものと考えられる。
これを受け実施したセミナーでは、日本医科大学大学院 医学研究科 循環器内科学分野の清水渉教授が、「脳・心血管イベントの抑制にむけた心房細動管理の重要性」の演題で心房細動の発症リスクと家庭におけるバイタルデータ計測の重要性について講演。循環器疾患の動向について説明するとともに、脳梗塞、心不全、認知症につながる心房細動の早期発見の重要性を強調した。
その後、オムロンヘルスケア技術開発統轄部の濵口剛宏統轄部長が、「血圧測定から心房細動の早期発見を可能にする革新的技術『Intellisense AFib』」と題し、同社の血圧計開発の歩みと、高血圧患者の心房細動早期発見に関する挑戦を伝えた。そこから導き出した「Intellisense AFib」は、心臓が拍動する際に生じる動脈内の圧力変化である圧脈波のデータを解析することで心房細動の検出を可能にした。
オムロンヘルスケアでは、米国4拠点5施設において「Intellisense AFib」に関する臨床試験を実施。感度(病気の人を検出する力)95%、特異度(病気でない人を検出する力)98%と、高い心房細動検出性能を示した。同社ではすでに中国で薬事認可を24年4月に、欧州でMDRの認可を24年3月に、米国でFDAのDeNovo認可を24年10月にそれぞれ取得。日本においても25年度中に薬事取得を目指す考えだ。★
月刊『国際商業』2025年02月号掲載