日本メナード化粧品は、幹細胞の3次元培養技術を改良し、本人の“細胞”から本人の“顔”を再現した人工全顔皮膚モデルの作製に成功したことを明らかにした。

皮膚は再生能力に長けた組織であり、その再生を担っているのが幹細胞である。近年では、幹細胞を応用したティッシュ・エンジニアリング(組織を体外で人工的に作る技術)の研究が進歩し、体外で皮膚組織を再構築した人工皮膚は再生医療分野でいち早く実用化されている。メナードでは、これまでに、安定的な人工皮膚モデルの作製やその応用性について研究を進めてきた。一方で、従来の人工皮膚モデルは平坦なシート状のものが一般的であり、実際のヒト皮膚の外観や質感、顔の形などを再現することは困難だった。

そこで、メナードは、よりリアルなその人の皮膚を再現した人工皮膚モデルの開発に取り組み、その人の幹細胞から全顔を再現する技術の開発を進めてきた。今回の研究では、幹細胞の3次元培養に適した足場材料を選定し、さらに、侵襲性の低い抜去毛包の幹細胞を用い、顔形状の人工皮膚モデルを作製することで、本人の“幹細胞”から本人の“顔”を再現した人工全顔皮膚モデルの開発に成功した。

この技術により、個人の顔形状と皮膚性状を反映した人工皮膚モデルを作製することができ、個人の感受性に対応した皮膚の刺激因子(紫外線など)の評価や、有効性の評価に加え、個人の顔の老化予測等を行うことが可能となり、パーソナルな美容サービスや化粧品の開発、創薬など幅広い分野での応用が期待される。また、従来のような摘出皮膚からの細胞採取を必要とせず、侵襲性の低い抜去毛包から任意の形状を有した人工皮膚モデルを簡便に作製できることから、患部の形状に合わせた新しい皮膚の移植医療への応用にも期待される。

同研究成果は2024年11月2~3日に盛岡で開催された第29回日本顔学会大会にて発表した。