ミルボンは、髪を生み出す〝幹細胞〟に着目した育毛研究に関する研究発表会を10月30日に東京・京橋の本社において開催。発表会は二部構成。第一部では、ミルボン基礎研究グループの菊池哲宏氏が登壇し、大阪公立大学と取り組んでいる共同研究の概要について説明した。

大阪公立大学とミルボンの共同研究部門である薬物生理動態共同研究部門では、器官培養において、育毛効果評価検討、育毛機序解明、動物代替法の検討、ヘルスケア製品評価検討を行っているが、同時に、現在は世界的に化粧品の開発における動物実験を禁止する動きが顕著になっていることから、人工皮膚モデルをつかった化粧品評価系検討、ヘルスケア製品評価検討を行っていることを説明した。

第二部ではその研究の詳細について、「〝幹細胞〟とは?」「新たな育毛研究とその課題」「技術的ブレークスルー」「新規育毛成分の効果」の四つの軸でヒトiPS細胞を活用した育毛研究を行い、育毛成分の探索を行っていることを示した。

「〝幹細胞〟とは?」のパートでは、毛包幹細胞が髪を生み出す根源であり毛髪を作り出す毛母細胞を生み出すものであることを説明。その上で、加齢などで薄毛になっている毛髪においては、毛包幹細胞が弱まり、毛母細胞も減少。これが抜け毛や薄毛を引き起こすことを示した。

「新たな育毛研究とその課題」のパートでは、育毛のアプローチの仕方として、現在は血流・毛母細胞に働きかけ、毛を成長させるものしかなく、新たな価値を生み出すことが難しい状況だった。また、ヒトの毛包細胞は取り出すことが難しく、研究に使用できないことが大きな壁となっていた。

そうした中、京都大学の山中伸弥教授らによりiPS細胞が発明されたことが技術的なブレークスルーとなり、ヒトiPS細胞を活用した研究に着手することが可能になった。つまり、技術的に難しかった幹細胞にアプローチする育毛研究へと進化した。例えば、iPS細胞から毛包幹細胞を作り出し、髪の根源に迫る研究、ヒトiPS細胞を用いた候補成分探索の高速化・効率化、ヒトiPS細胞を用いた育毛成分の発見などに道筋ができた。

こうした技術革新から導き出した新規育毛成分の効果検証では、ヒトの毛包組織を用いた育毛効果を検証。その結果、添加なし群に比べ有意差を確認した。

ミルボンでは今後、育毛作用メカニズムのさらなる解明、および高機能頭皮ケア製品の開発を目指し、研究を進めていく考えだ。

月刊『国際商業』2024年01月号掲載