伊勢半本店が運営する紅ミュージアムは、2月20日から4月7日まで、企画展「ミニチュア愛(らぶ)!」を開催する。22年10月に好評を博したミニチュア企画展に続く第2弾。今回は雛道具研究家の川内由美子氏が蒐集した「川内コレクション」の中から精選した雛道具を紹介する。江戸の名店「七澤屋」の雛道具から昭和レトロな趣にあふれた日用品のミニチュアまで、眼福の“小”世界を届ける。

ミニチュアには、小さくて可愛いだけでは片づけられない魅力がある。現実では見慣れたモノが見慣れないスケール感で出現することの面白味や、思わず見入ってしまうリアル感。小さく切り取られた世界を前にして、隅々まで観察したり、その世界観を追体験したり疑似体験したり。作り手の技量や遊び心に思わず感動してしまう。ミニチュアの奥深さにハマってしまうのは得てして大人だという。

今回紹介する「川内コレクション」は、雛道具研究家の川内由美子氏が長年にわたって蒐集してきたミニチュア雛道具類を中心とする一群。雛道具といえば、雛祭りに飾り付けて女の子が楽しむものというイメージが定着しているが、かつては文化人・趣味人の大人、それも男性がミニチュア雛道具を熱心に蒐集した事実があったことはあまり知られていない。

企画展は大きく四つのゾーンで構成。一つ目は「七澤屋の小型・精巧な雛道具」。雛飾りが発達した江戸時代、雛道具も単体で鑑賞される価値を持つようになる。中でも江戸の名店・七澤屋が手掛けた精巧なミニチュア雛道具は、その種類の多さや再現性の高さで抜きん出たクオリティを誇った。将軍家や諸大名家にもてはやされ、一世を風靡した七澤屋の多様多品目の雛道具を紹介する。

二つ目は「小型・精巧な雛道具の広がり」。七澤屋製の他にも、手の込んだ小型の雛道具が制作されていた江戸時代。七澤屋に並ぶ名店・武蔵屋の雛道具は、蒔絵の見事さにも注目だ。明治以降の名店・木屋の製品も展示している。

三つ目は「小ささの極み、掌中の雛道具」。「川内コレクション」の中でも、ひときわ小さく作られた雛道具類にスポットを当てた。肉眼で楽しむことができる絶妙な小ささは見逃せない。

四つ目は「ミニチュア玩具と“あの頃”」。多様なコレクションの中から、明治・大正・昭和の暮らしの一端を切り取ったミニチュアを展示。懐かしさとともに、当時の風景に入り込んで疑似体験できる。

伊勢半本店本紅事業部の島田美季部長は今回の企画展の意義について、次のように語る。「個人のコレクターが独自の視点で築いたコレクションは、趣味・嗜好の世界にとどまらず、そのジャンルにおける文化の継承に寄与するものです。今回の展示が日本のミニチュア文化を、さらにはその根源にあるミニチュア愛を再考するきっかけにしていただきたい」。

小さなモノ、巧緻な細工の魅力を心ゆくまで楽しめそうだ。

小さなモノ、巧緻な細工の魅力を心ゆくまで楽しめる

月刊『国際商業』2024年04月号掲載