ファンケルは、第21回研究ミーティングを2月16日に神奈川県横浜市のファンケル総合研究所において開催。「体力を見える化する技術」に関し、新規事業本部新規事業推進部新規探索グループの阿部征次氏が講演した。
阿部氏は、中強度の運動が運動効果と運動強度の黄金比と定義。ただ、中強度と一言で言っても個人差があるうえに、どの程度の運動量か測定するにはこれまで高額な機器を用いた呼気CO2濃度を測定する呼気ガス分析法(VT)しかなく、個人が把握するにはハードルが高かった。「それを何とか簡便にできないか」(阿部氏)を出発点に、発想を逆転。呼気CO2濃度と血中酸素飽和度はリンクし、代替指標になるとの仮説を立て、呼気で測定したデータと比較検証(n=20)。その結果、VTと血中酸素飽和度を用いた酸素飽和度性作業閾値(SpO2 Threshold : ST)の数値に良好な一致と興味深い差異があることが判明。臨床試験においてもVTとSTの一致度、互換性、相関性を確認し、国際誌に論文が受理された。STがVTの代替法となりえ、従来の高額機器がパルスオキシメーターへと簡略化できるという結論に至った。
この結果をもとに、STを用いた新たな中強度測定方法の確立とともに、STの測定を軸にしたデバイス・アプリの開発に応用。リハビリテーション医療、スポーツ、運動不足、ボディーメイクといった分野における課題解決に貢献していく考えだ。すでに横浜市立大学附属病院リハビリテーション科、広島大学病院リハビリテーション科と共同研究を進めており、いずれの基幹からも大きな期待を寄せる声が届いているという。
ファンケルでは今後、産官学の連携で事業化の体制を構築し、本格展開を目指していく考えだ。
「これが実現できれば世界を変える技術になる。運動を通じて世界中の多くの方々に貢献できるよう、様々な機関と協働してさらに研究を深めていきたい」(阿部氏)
ファンケルでは、16年から報道関係者向けに研究ミーティングを実施。開発に至るまでの経緯や独自の視点で培ってきた研究成果、今後の展望など、同社の研究開発技術の理解促進を図っている。
月刊『国際商業』2023年04月号掲載