目の前の課題への対応ではなく、未来に向けて考えた――。2021年5月10日に開かれたファンケルの21年3月期決算会見で島田和幸社長は、中期経営計画「前進2023」への強い思いを言葉にした。この中計では売上高の約6割を占める化粧品事業について、変えないこと、変えることを明確に示している。前者は、創業の原点である無添加化粧品の安心、安全という絶対的な価値とブランドの多様化の推進。後者は、効果実感の高い新製品の発売と肌本来の機能を高める無添加の価値を積極的に情報発信することだ。そして具体策の一つは、基礎スキンケアユーザーの拡大で、21年度から3年連続で毎年1ラインずつリニューアルする。決算会見から約1カ月後の6月16日に発表したのが、無添加スキンケア「エンリッチ」のリニューアル発売。これを皮切りに、ファンケルの化粧品事業は、新たなスタートを切る。

地道な研究が生んだ三つの新知見

ファンケルは、研究開発を重視する企業である。創業者の池森賢二氏が「小さな会社が大きな会社に挑むには、研究開発力が最も重要」と考え、創業間もないころから投資を惜しまなかったからである。直近の成果は、皮膚嗅覚受容体(嗅覚センサー)に関する三つの新知見を確認したことだろう。

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