「私も今年で82歳。きちんと判断ができるうちに、将来を託せる企業に譲った方がいいと決断した」。ファンケルの池森賢二会長は会見の席でこう述べた。
ファンケルは8月6日、キリンホールディングス(HD)と資本業務提携を結んだと発表した。ファンケルは創業者である池森会長、その親族および資産管理会社などが保有する株式33.0%(議決権ベース)をキリンHDに1293億円で譲り渡す。株式譲渡予定日は9月6日。これによりファンケルはキリンHDの持分法適用会社になる。
今後ファンケルはキリンHDが持つ酵母や発酵技術を生かした化粧品の共同開発や、共同研究の推進、互いの販売網を生かした顧客の拡大を図るとしている。ファンケルの島田和幸社長は「互いに重複事業が少なく、シナジー創出が見込める」と期待を込めた。
一方、キリンHDが狙うのは健康分野の強化だ。同社の事業は飲料と協和キリンの医薬が二本柱だが、今後の市場環境を見据え、「医と食をつなぐ事業」を第3の柱に育てる計画を掲げている。キリンHDの磯崎功典社長は「疾病の予防などを掲げる当社と、健康寿命の延伸を図るファンケルとは目指す方向が一致している」と両社の親和性を強調した。また、ファンケルの経営の独立性については、「今回の株式取得は発行済み株式の3分の1未満であり、少額出資。ファンケルの独立性は守る」と断言。島田社長も「上場維持はお約束いただいている」と話した。
今回の提携の経緯については、「自分から持ち掛けた」と池森会長。「買値を競わせるような売り方はせず、1社に絞り込み話し合いをしてきた」と説明した。自らの進退については、「これを機にきれいに引きたかった」としながらも、両社に慰留されていることから結論は今後出すとしている。