休眠客を動かしたPS事業とEC事業の協業

ポーラの事業構造が明らかに変わった。抜本的な改革には危機感が必要なのか、それを後押ししたのは新型コロナだった。まずプレステージストア(PS=百貨店)事業の国内客が2021年にコロナ前の水準を超えた。高収益体制へのシフトも加速し、インバウンド需要消失の苦境から一転、黒字化を果たしている。もう一つは、EC事業が急成長を遂げたこと。もともとトータルビューティー(TB)事業の補完的な役割だったが、コロナの外出自粛などによる消費者の消費行動変化に加え、デジタルコミュニケーションを強化したことでEC利用者が急増。特に薬用しわ改善化粧品「リンクルショット メディカル セラム」を求めるお客が殺到した。売上高は、19年が約21億円、20年が約35億円、21年が約52億円で、22年も前年を超える見通し。競合を圧倒するECの活用度と言えるのではないか。

コロナの有無とは関係なく、PS事業は改革を迫られていた。ハイプレステージブランド「B.A」と「リンクルショット メディカル セラム」による認知拡大に加え、百貨店のカウンター数は60を優に超えていた。出店拡大期を終え、高収益体制への移行は喫緊の課題だったのである。その歩みを遅らせたのは、インバウンド需要による未曽有の売り上げ増だろう。外国人観光客への対応に追われ、国内のロイヤルカスタマーづくりに出遅れたと言える。実際、コロナを機に外国人観光客が消えると、PS事業の売上高は半分以下に激減したのである。

ポーラの百貨店カウンター。
B.Aの世界観を余すことなく表現

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