ECの成長から見えた潜在顧客の存在
静かに、大胆に。ポーラが事業基盤の再構築に挑んでいる。その背景には業績の伸び悩みがある。2021年12月期の売上高は前年比2.2%増、営業利益は同49.8%増。一見すると、コロナ禍からの反転攻勢に見えるが、そうとも言い切れない。コロナ前の19年12月期から減収減益となり、成長が鈍化し始めていたからだ。当然、当時から構造改革に着手していたものの、コロナ禍の影響で進捗に遅れが生じたのは否めない。
ポーラの成長鈍化は、強い組織だから生じたのかもしれない。高級ブランドとして盤石な地位を築いた「B.A」、17年1月発売の日本初の薬用シワ改善化粧品「リンクルショット メディカル セラム」が象徴する認知度抜群の商品群と、訪問販売が原点のトータルビューティー(TB)、プレステージストア(PS=百貨店)、オンラインストアという三つのダイレクトチャネル(顧客接点)の掛け合わせが、ポーラの競争力を生んでいる。製販が別々の既存メーカーに対し、ポーラと各チャネル、そしてお客はダイレクトにつながっており、その顧客情報を生かして独自のCRMを回し、ブランドの認知拡大、ロイヤルカスタマー育成を推し進めてきた。特に全国に約590店のエステを提供するサロン型ショップ「ポーラ ザ ビューティー(PB)」を担当するTB事業は、全体の業績を支えている。ダイレクトな顧客接点を持ち難い競合他社にとって、ポーラの事業基盤は長らく垂涎の的だった。
「B.A」(上)と「リンクルショット」(下)は、ポーラを象徴する商品になった
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