ポーラ化成工業は、目のまわりを取り囲み、目元の印象に影響を与える筋肉である「眼輪筋」の加齢変化と目元の悩みとの関係性を研究し、四つの成果を発表した。

年齢とともに眼輪筋が緩やかに低下

一つ目は、「眼輪筋」の筋力は年齢とともに低下すること、そしてまぶたが重いと実感のある人で「眼輪筋」の筋力が低下していたことである。同社は、目のまわりに存在する「眼輪筋」 という輪状の筋肉と、目元の印象の関係を研究しており、これまでに、加齢によって眼輪筋の厚みが薄くなり、目元のくぼみに結びつくことを 見出している。今回、さらに研究を進め、筋力の及ぼす影響を明らかにしようと考えたという。

まず筋力の加齢変化を把握しようと 20~60代女性60人を対象に眼輪筋の筋力測定を実施。その結果、年齢とともに筋力が緩やかに低 下していくことが分かった。

眼輪筋は目元の印象やドライアイなど目の機能に も関係していると考えられており、その筋力の低下 はさまざまな影響を及ぼすと考えられている。そこで、 筋力を測定した対象者に、さまざまな生活習慣や 目元の悩みについてのアンケートを行った。そ の結果、まぶたを重いと感じている人は、全くまぶ たを重いと感じていない人と比べて目のまわりの筋 力が低下していることが判明した。

人は、まばたきを一日に約1~2万回以上している とも計算されていることから、まぶたの重さは目の 開きだけでなく生活上の過ごしやすさにも影響を与えるのではないかと考えられる。今回の研究では、本来筋線維であった領域が、筋線維よりも伸び縮みしにくい結合組織に置きかわ る「線維化」という現象が加齢で進んでいることも確認している。このような眼輪筋の加齢変化に関する 一連の知見を活用することで、一人ひとりの魅力を引き出す提案やより心地よい生活への貢献につなげたいと考えている。

眼輪筋の線維化の影響とは

二つ目の成果は、加齢に伴って眼輪筋の「線維化」が進むことを発見したことだ。ポーラ化成工業によると、年齢とともに眼輪筋の筋力が緩やかに低下していくこともわかってきた。筋力低下の原因が明らかになれば予防や改善が可能になる。眼輪筋が薄くなること以外にも筋肉組織に何らかの変化が起こっているのではないかと考え、筋肉組織の内部構造の変化を調べたという。

筋肉には、筋肉線維よりも伸縮性の低い結合組織(組織の間を満たし、それらを結合・支持する組織)が筋肉線維の間を埋めるように存在している。20代と60代の眼輪筋の組織断面を染色し構造を比べると、60代では明らかに結合組織が増えていた。結合組織が線維状タンパク質からなることから、この現象は「線維化」と呼ばれている。

次に断面積に占める結合組織の割合と年齢の関係を調べると、加齢に伴い結合組織の割合が増加しており、眼輪筋の線維化が進んでいることが分かった。このことから、眼輪筋の線維化が進むことで、筋肉組織の伸縮性が低下することが筋力低下の一因になると考えられる。

新たなケア「古い線維を作り替える」の可能性

三つ目の成果は、脂肪由来幹細胞を皮下注入する再生医療を模した評価系で、施術後に起こる生体反応を研究し、①古い線維を壊し、新しい線維を作ることで、皮下組織の作り替えを引き起こす鍵因子を発見、②鍵因子の発現を高める作用がある複合エキスを開発したことである。

皮膚が老化すると、コラーゲンなど細胞外(組織の間を満たし、それらを結合・支持する結合組織)の線維の量が減るだけでなく、それらが変性した古い線維が蓄積 することで、皮膚を支える力が衰えている。これまで蓄積した古い線維を取り除くことは難しいと考えられてきたが、一方で脂肪由来の幹細胞を皮下に注入する再生医療においては、古い線維が新しい線維に作り替わる現象が起こり、シワ・たるみ等の老化肌悩みが改善することが報告されている。

そこで、新鮮な皮下組織片を用いた実験系で、再生医療後に起こる生体反応を解明することで、線維の作り替えを起こす鍵となる生体因子を見つけ出すことにした。その結果、脂肪由来幹細胞から分泌されるTSG-6という生体因子が、組織の炎症状態を改善することで、線維化(変性したコラーゲン等の線維が過剰に蓄積すること)を抑制し、かつ線維の作り替えを促すことを発 見した。つまり、TSG-6が線維の作り替えを引き起こす鍵として働いていたのである。

脂肪由来の幹細胞を用いた実験でTSG-6の発現を高めるエキスを探索したところ、マグワ果実エキスとアーチチョーク葉エキスの複合エキスに効果を見出した。さらに、培養した皮下組織片に複合エキス を添加すると、コラーゲンの分解と新生が順に誘導されることが分かった。 従来、加齢に伴う肌悩みに対しては「減った線維を補う」アプローチが中心だったが、今回の知見により「古い線維を作り替える」という新たなケアの可能性が開かれることになる。

肌内側からのハリ弾力向上とべたつきの軽減効果を両立する新製剤

四つ目の成果は、ハリ弾力を感じさせる油剤の高配合と、それによる不快なべたつきを克服することに成功したことだ。エイジングケアクリームには、ハリ弾力を感じられる使用実感が求められる。ハリ弾力の実感を与えるのに効果的な素材の一つに、ねっとりとした油剤(以下、ハリ油剤)がある。こうした油剤は、長い分子同士が絡まりあって粘弾性をもつことから化粧品に配合するとハリ弾力実感が高まる。しかし、肌表面にハリ油剤が残るこ とで不快なべたつきにつながる。そこで、乳化を工夫することで①ハリ油剤を多量に配合しハリ弾力実感を高めつつ、②角層への浸透性を高め、肌表面に残るハリ油剤を減らすことでべたつきを軽減したいと考えたという。

これまでにポーラ化成工業では、高い乳化力と細胞間脂質の構造に働きかけ角層への浸透を促進 する作用を併せ持つ独自成分「Mal2Far」を開発し、 さまざまな目的で活用してきた。今回の研究でも、ハリ油剤の乳化に「Mal2Far」を用いることで、多量のハリ油剤を配合した新製剤を開発することに成功した。また、油剤の浸透力が向上することも確認できた。この技術により、肌内側からのハリ弾力向上とべた つきの軽減効果が期待できる。

ハリ弾力とべたつき軽減の効果を計測及び官能評価をしました。機器を用いたハリ弾力計測では、「Mal2Far」を用いたクリーム製剤(新製 剤)は、従来製剤に比べて肌の弾力を向上させる効果に優れているこ とが確認できた。人工皮革を用いたべたつきの計測においても、従来製剤に比べて軽減することが確認できた。

さらに30~40代の専門評価者23名による官能評価で、8割以上の 評価者が新製剤単体の評価で「塗布部位にハリ弾力が感じられ、な おかつべたつきがない」と判定しました。また従来製剤と比べた評価 では7割以上が「塗布部位にハリ弾力が感じられる」「べたつきが軽減 した」と判定した。よって、新製剤は肌内側からのハリ弾力向上とべたつきの軽減効果を両立でき、快適な感触であることが確認できた。