マスク着用が続いてもメイクは不可欠な存在

ブランドのコアなファンを生むのに欠かせないのは、競争力を持つ商品である。直営店とECの売り場に人を呼び込んでも、購買欲を刺激できなければ意味がない。使用した後に商品のベネフィットに納得してもらわなければ、コアなファンは生まれない。だからこそ、ハニーロアは満を持して、6月、7月、8月の3カ月連続で新商品を投入する。

まず6月10日に発売したのはフレグランスシリーズで、商品は二つある。一つ目は、オードパルファン「ハニーロア フレグランス」(10種・15㍉㍑・2640円)である。香調はフローラ、クリア、ホワイトフォグ、シトラス、アクア、ハニー、ブラックティー、ウォーターガーデン、ペアドロップ、ブレスブルーの10種で、日常使いから晴れの日まで、多様な生活シーンで使えるラインアップだ。15㍉㍑という少量にしたのは、持ち運びやすくするため。使い切りサイズにしたことで、ショッパーの財布の紐は緩みそうだ。

ハニーロアが6月10日に発売したフレグランスシリーズ

ハニーロアが6月10日に発売したフレグランスシリーズ

二つ目の商品は、「ハニーロア ルームフレグランス」(6種・100㍉㍑・4950円)である。香調はフローラ、クリア、ホワイトフォグ、アクア、ブラックティー、ブレスブルーの6種で、リビングや寝室など部屋の用途に合わせて香りを取り入れることを推奨していく。

デジタルでは表現できない香りは、リアルの売り場ならではの体験価値と言えるだろう。基幹店の名古屋ゲートタワーモール店にフレグランスカウンターを初めて導入したのは、そのためだ。香りの表現は奥深い。その分、ブランドの個性を発揮することもできるから、新客から愛用者への育成もスムーズに進むかもしれない。基幹店で先行発売したフレグランスシリーズは、上々の滑り出しを見せているという。直営店の重要性を知り尽くすハニーロアらしい成果と言えるだろう。

一方、7月15日に発売するのは、愛用者育成の要であるスキンケアの商品2種だ。薬用美白化粧水「トゥエッセンシャル ホワイトニングローション s」(150㍉㍑・5500円)と薬用美白クリーム「トゥエッセンシャル ホワイトニングクリーム s」(50㌘・6600円)がそれで、どちらも肌にできたシミはもちろん、その元にもアプローチするのが特徴である(※メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ)。スキンケアの訴求ポイントは、コスモス認証と医薬部外品の認証を同時に取得していること。これをハニーロアは「二つの本質」と呼び、堅実な美白成分とオーガニックマヌカハニーを組み合わせたナチュラル発想のホワイトニングシリーズとして大々的に紹介するという。

そして8月5日に発売するのは、軽い使用感とうるおい効果を両立するハニーウォーターを24%配合したクリーム口紅「ハニーウォーター ディップ」(全7色・3300円)である。カラーバリエーションはジスクール、ピンクペッパー、クランベリー、サルサロハ、チャナ、トレヴィス、スパイス11%の七つ。しばらくの間、マスク着用の常態化が続く見込みだが、住谷カンパニーエグゼクティブは「口紅の発売は、リアルとデジタルを連動させるためだ」と指摘し、次のように続けた。

「20年9月に1000人台だった公式インスタグラムのフォロワー数は、いまは2万1000を突破しています。21年5月のEC売上高が過去最高になったのは、SNS戦略が軌道に載っているからですが、その反響を分析すると、メイクはスキンケアの100倍以上の効果があります。やはり、どのような時代になっても、カラーは見栄えがよく、生活者の心を踊らせるのは間違いありません。ですから、口紅でデジタル上の話題を生み出し、店頭に足を運ぶきっかけをつくる。そして店頭では、スキンケアやフレグランスの香り、テクスチャーを体験していただき、コアなファンへと導いていきます」

ハニーウォーターを24%配合したクリーム口紅「ハニーウォーター ディップ」

ハニーウォーターを24%配合したクリーム口紅「ハニーウォーター ディップ」

国内市場開拓の一方で、海外の需要獲得への準備も抜かりはない。世界的な海外渡航制限の影響でインバウンド需要は消滅した。近い将来、外国人観光客は戻ってくるだろうが、インバウンド需要に依存するビジネスモデルの弱点は新型コロナ禍で痛いほどわかっている。そこで特に消費大国・中国において、在日中国人バイヤーを通したCtoCでの販売に着手。信頼できる人からの推奨を重視する中国において、CtoCは重要なチャネルの一つで、そこでの話題喚起はRED BOOKや淘宝にも波及し、ブランドの認知拡大を後押しできる。「中国本土でのビジネス拡大はもちろんだが、インバウンドへの種蒔きにもなる」と住谷カンパニーエグゼクティブは説明する。

ハニーロアは21年秋、年明けにも新商品発売する予定で、攻勢を緩める気配はない。もちろん、新型コロナ禍の先行きは不透明だが、未来を想定し準備を整えなければ、成長機会を勝ち取ることはできない。ハニーロアが打ち出したOMO、商品、海外の三位一体の戦略は、中長期を見据えたもの。コロナ前の躍進があるだけに、化粧品業界の期待値は高まっている。