マンダムは2021年4月1日に社長交代を行った。1995年6月から経営を担ってきた西村元延氏は代表取締役会長に就任。これまで取締役常務執行役員を務めていた子息の西村健氏が代表取締役社長執行役員に昇格した。交代の理由は、「VISION 2027」の実現に向け、変革・挑戦期となる新中期経営計画「MP-13」のスタートを機に、経営体制の強化を図り、企業価値向上を目指すためとしている。だが、新型コロナ禍で国内外の外部環境は激変している。その最中で西村会長が大きな決断を下した真意はどこにあるのだろうか。一方、弱冠38歳でマンダムを継いだ西村社長は、どう社内を変えていく考えなのか。会長と社長それぞれに忌憚のない話を聞いた。

インタビュアー 本誌編集長 長谷川隆

西村元延マンダム会長

成熟しない世界での「お役立ち」の追求を次世代に託した

化粧品、日用品産業のポテンシャルは十分にある

――新型コロナ禍は、化粧品、日用品の市場に大きな影響を与えています。

西村 ここ2年ぐらいは、あまりにもカオスの状態で、私自身も十分に整理できていないのですが、コロナ禍に背中を押される形で、想像している以上に大きく社会変容、行動変容が起こっていることは事実です。資本主義の功罪といいますか、グローバル化に伴う貧富の差、社会の断絶、感染症のまん延など、多くの問題が顕在化。その結果、世界中の人々のマインドも変化し、先人から脈々と発展させてきた社会について「本当にこれでよかったのか」という原点回帰の見直しが始まっています。人々がこれまでタブーだと思っていたことに対し、大きな声を出し始めているのは、単純に足元の状況を改善するのではなく、これまで疑いを持たずに進めてきた人間の排他的、直線的、成長主義が支える経済的行動、政治的行動に対して、サステナブルな状態に抜本的に変えていこう、ということだと理解しています。これはSDGsのこれとこれに取り組みます、という狭い範囲の話ではありません。企業は、どのように社会に役に立つか。社会的存在価値が認められる企業が存続、発展し続けられるということがより明確になったと見ています。

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