日本石鹸洗剤工業会(JSDA)は2021年5月21日、新会長に花王の長谷部佳宏社長が就いたことを発表した。また、今期(令和3年度)の活動基本方針も明らかにした。

JSDAは、石鹸、洗剤を中心とする日用品および産業用原料や日用品の原料となる脂肪酸、グリセリン等の生活者の身近な製品を取り扱うメーカーを構成員とし、業界の健全な発展に寄与するために、共通課題の解決を図る活動を続けている。

昨年は、1月末より、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大でパンデミックとなった。このような状況下、JSDAの会員社は、生活必需物資である洗浄剤やその原料を供給する業界として、感染対策に細心の注意を払って事業を継続し、需要の高まった洗浄製品などの安定供給に努めながら、リモートワークなどを活用して、業界の共通課題を解決する活動を維持してきた。 

除菌機能を持つ洗浄製品の需要の増加に対応するとともに、啓発活動も活発に行った。児童の手洗い啓発活動の「手洗いポスターコンクール」の応募数、養護の先生たちと共同開発した手洗い教育プログラムのダウンロード数、石鹸のエピソードを詠んだ川柳の募集などが、大幅に増加した。JSDAの洗浄製品の役割や衛生への啓発が、人々の快適で健康な暮らしの根幹に位置付けられることを再認識した年になった。

一方、循環型社会形成への対策は、常に継続的に対応することが求められる。例えば、プラスチック問題については、1990年代より濃縮洗剤や詰め替え容器を積極的に導入して、容器包装プラスチックの削減に取り組んでいる。今後も、循環型社会形成に向けて、自主削減計画やリサイクル・CO2削減への取り組みなど、「持続可能な開発目標(SDGs)」に代表されるサステナビリティ活動を引き続き推進する考えだ。 

現在、世界は経済を中心に、かつてないほど密接につながっており、一つの問題が地球全体に影響を与えるために、SDGsの目標達成は、日本一国で達成できるものではなく、世界的なパートナーシップが欠かせないものになっている。パンデミック対策、プラスチック問題、資源問題などSDGsに関する課題には、地域や業界を超えた取り組みが必要である。行政関連機関・関連団体・学会の関係者、そして、海外工業会など、国内外のステークホルダーの人々と密な情報交流を行い、今後もパートナーシップを通じて業界の発展に努めるとしている。

そしてJSDAの会員社が進めてきたイノベーションもSDGsの目標達成には重要である。 

このような認識のもと、JSDAは令和3年度の活動基本方針として以下の四つを掲げた。 

1. サステナビリティへの取り組みを継続・強化する 
2.広報・啓発活動を強化・充実する
3.行政機関、国内団体および海外の関連団体との協力関係を発展させ、諸課題に対応する
4.公正な自由競争を基本とし、活力と創造性に富んだ業界活動により、イノベーションを支援する

そして活動基本方針にもとづき、重点事業活動を以下のように定めた。

1.サステナビリティへの取り組みの継続・強化(環境保全、化学物質管理、および製品安全)

(1) 環境への取り組み

プラスチックの課題については、1995年よりJSDAの業界は、自主的に容器包装に使用されるプラスチック量の削減に取り組んでいる。JSDA会員が一体となって、自主削減計画を立案して1期、2期計画を立案、実行し、大きな成果をあげてきた。2016年末に立案した20年までの第3期自主削減計画については、JSDAで設定した環境配慮設計ガイドラインを活用して遂行していく。この削減計画の継続に加えて、今後はリサイクル・CO2削減などの視点も強化した第4期自主削減計画の策定などの活動にも取り組んでいく。環境や人体への安全性については、1998年より行っている化管法PRTR制度の対象となる界面活性剤の代表河川におけるモニタリングと洗剤原料のリスク評価を継続している。今後も同物質の安全性を実際に確認し、その結果を環境年報に公表していく。

(2) 製品安全の為の洗浄剤製品の消費者向け情報の強化

製品安全については、消費者により分かりやすい注意喚起を行うため、新たに安全図記号の策定を行い、2018年より洗浄剤製品への表示を開始している。今後も、本安全図記号の普及と消費者への啓発活動を国内だけでなく、アジアを中心とする海外に向けても行っていく。

2.広報・啓発活動の充実

(1) 業界および業界製品に関する情報発信

洗浄剤関連の人および環境への安全性などの情報や、適正な使用方法、衛生や健康活動への取り組みなどを、消費者、官公庁、学校、関連団体などに継続して提供していく。そして、これらの工業会の主要活動を広報季刊紙「クリーンエイジ」を発行して広報するとともに、ウェブサイトでの発信をより強化して、今後も広く、迅速な情報発信を行っていく。

(2) 洗浄剤の適切な使用と活用促進のための啓発活動

昨年のパンデミックで改めて重要性の認識された、手洗い啓発活動を引き続き実施する。具体的には、当工業会が発足以来行っている「手洗い啓発活動」を今後も、継続実施していく。

児童に手洗い習慣を身に着けてもらうことを目的として、小学生を対象にした、「手洗いポスターコンクール」、および養護の先生と一緒に作成した、正しい手洗いの指導に取り組める教育資料の普及を図る。

また、化粧石鹸の普及啓発の取り組みとして、石鹸をテーマにした川柳の募集・表彰活動を行っていく。一方、多様化してきた商品を正しく、上手に使ってもらうために、各市町村の消費生活センターで主催する生活に関する出前講座等での洗濯講座などの啓発活動を実施していく。

3.行政機関、国内団体、および海外の関連団体との協力関係の発展(産学官連携の強化) 

経済産業省、環境省、厚生労働省、消費者庁他の関連行政との情報交換を緊密に行って、工業会の活動を紹介して、業界の発展に努める。

そして、益々進む、環境問題や化学物質管理のグローバル化に対応するために、国際工業会会議の一員として海外の関連団体との情報交流や協力を行う。21年は、秋に中国で開催されるアジア・オセアニア石鹸洗剤工業会会議において、ベストプラクティスの共有と海外への情報発信を行う。産官学連携における学術団体との連携では、グリセリンの新規用途開拓を目的とした、研究への助成は油脂化学研究者の育成に貢献しており、今後も継続実施する。 

4.公正な自由競争を基本とした活力と創造性に富んだ業界活動によるイノベーション支援 

(1) 法務関連や企業の労務課題の変化に関しての調査、研究の推進 

社会からのガバナンス強化の要請、個人情報の規制の強化、労働環境の変化などに対応するために、改正される法律や労務課題の調査・研究を継続する。

(2) 当業界原料・製品の需要動向や流通構造の変化に関する調査・分析 

業界関連製品に関わる生産動態統計、輸出入統計および油脂製品、石鹸・洗浄剤の原材料・燃料価格の市場動向調査を継続し、会員各位へ情報提供を行う。商流については、関連する課税制度・流通システムの標準化対応などの施策について調査、研究を行う。

(3) 最新技術の情報のフォローと技術標準などの設定・改訂活動の推進 

他業界の技術の当業界への応用の可能性を考える機会を設けて情報の共有化を図る。関連する技術標準(JISや界面活性剤に関する国際基準であるISO/TC91等)の改訂や追加を検討する。国際規格については、ISO/TC91総会での議論により戦略的規格提案を行い、JISについては、引き続き合成洗剤(石鹸)のJIS(日本工業規格)の試験方法の改訂に取り組む。さらに、知的財産に関するテーマについて研究を継続して進める。