日本石鹸洗剤工業会は12月21日、17年度の容器包装プラスチック使用量削減量と界面活性剤の河川水モニタリング調査と生態系リスク評価について発表した。前者は第三次自主行動計画の目標値17%削減(製品出荷量あたりのプラスチック使用量〈原単位〉1995年比)を2年目で達成、後者は問題ないレベルであることを確認した。
同工業会は、自主的な活動として1995年から業界における包装容器プラスチック使用量の実態を把握し、使用量削減の取り組みを継続している。2000年に容器包装リサイクル法が施行され、さらに06年6月に改正容器包装リサイクル法が成立。同工業会は、これと同時期に、第一次自主行動計画として業界の主要8製品群(①ボディ用洗浄剤、②手洗い用洗浄剤、③シャンプー・リンス、④洗濯用液体洗剤、⑤柔軟仕上げ剤、⑥台所用洗剤、⑦住居用洗剤、⑧漂白剤・かびとり剤)を対象に、製品出荷量あたりの容器包装プラスチック使用量を95年度比で10年に30%削減する目標を公表し、達成。引き続き11年には、第二次自主行動計画を設定。15年に95年比で40%の原単位削減を目標として、これも達成した。この活動をさらに発展、継続するために策定した第三次自主行動計画は、20年に95年比42%の原単位削減を目標としている。
まず製品出荷量のグラフは、内容物の重量をベースにした製品出荷量の推移を表している。17年の対象製品群の出荷量は、前年比4・5%増の1160万8000トン。集計を始めた95年比では、89%の増加になっている。特に、洗濯用液体洗剤の出荷量が伸びており、95年比で11・3倍。第二次自主行動計画を決めた10年比でも60%の増加だ。全体量では95年より約75万7000トンの増加があったが、そのうちの約6割の46万1000トンは、洗濯用液体洗剤の増加によるものだ。逆にシャンプー・リンスは、95年比で27%だが、10年比では10%しか増加していない。
次に、詰替え・付替え用製品出荷比率のグラフを見ると、同工業会がプラスチックの容器包装の使用量調査を始めた95年前後から10年間は、どのカテゴリーも大幅な詰替え、付替え用品の開発・販売が行われていることがわかる。また、第二次自主行動計画がスタートした10年前後からは、その増加率が鈍化していることが見て取れる。活発に新製品などが上市されるシャンプー・リンスのカテゴリーは、その比率が直近5年間は下がっている。同じような傾向は、シャンプー・リンスと同じ、インバス製品のボディ用洗浄剤でも同じだ。全体で見ると、17年は、詰替え・付替え品の出荷比率は79%を占め、出荷量では95年の約17・3倍になっている。これにより詰替え・付替え品の開発がプラスチック使用量の削減の推進力になってきたことがわかる。
一方、プラスチック使用量の推移のグラフは、容器包装プラスチック使用の絶対量と自主行動計画で示した製品出荷量あたりのプラスチック使用量の原単位の推移を示している。棒グラフは使用されたプラスチックの絶対量、折れ線グラフは原単位の変化を示している。対象製品群の全プラスチック使用量を見ると、17年は95年比8・8%増の7万8500トン。製品出荷量あたりのプラスチック使用量である原単位は、製品出荷量が伸びたことで、95年比で42%の削減。17年は、第三次自主行動計画の2年目として、20年の目標値42%を達成した。特に、洗濯用液体洗剤・柔軟仕上げ剤が貢献しているという。
第一次自主行動計画では、プラスチック使用量を10年に95年比で30%削減することを目標にし、最終的に37%の実績を得た。第二次自主行動計画では、15年に同比で40%の削減を目指し、最終的には目標通り40%まで達成できた。また、第三次自主行動計画は2年目の17年に、3年前倒しで目標の同比42%に到達した。だが、同工業会は、目標は引き上げない。というのは、第三次自主行動計画は、第二次と比較して、わずか2%の削減伸長に見えるが、近年の詰替え・付替え比率の上昇が鈍化している状況では、今後のハードルは高いからだ(写真参照)。
一方、環境・安全に関する取り組みについて、同工業会は、使用された石鹸の環境モニタリングを4種の界面活性剤に着目して1994年から実施している。柔軟剤基剤に使用されていたジアルキルジメチルアンモニウムクロリドについては使用量が減少しているのに対し、トリエタノールアミン4級塩(TEAQ)の使用が増えたため、モニタリング対象を12年から13年で変更している。
同工業会は、家庭排水の流入が想定される都市周辺河川を対象に、界面活性剤の存在実態の確認と水生生物への影響評価を行うために定点観測を行っている。また、2000年の化学物質排出把握管理促進法(PRTR制度)の施行に伴い、02年から調査地点を7カ所に拡大している(写真参照)。
まず、4種の界面活性剤の排出量と移動量(写真参照)は、家庭からの排水などがどのようなルートで自然界に出るかを国の公表データ、同工業会のモニタリング結果をもとに示している。なお、TEAQは、PRTR指定物質ではないので公表データは存在しない。
排出量は、処理されずに自然界に排出されると推定された量。そして移動量は、公共下水処理場あるいは合併処理浄化槽で処理された後、自然界に出ていくものである。移動量の欄で参考として公表されている値は、家庭から排出されたもののうち、下水処理される量を国が推計したもの。国が推計を行う対象は、環境にそのまま出ていく排出量だけだ。適切に処理され、環境への排出がない移動量は、推計対象ではないため、参考データとされている。
これらから、同工業会がモニタリングの対象にしている4種の界面活性剤の多くは、移動量として何らかの処理をされてから自然界、河川などに排出されているといえる。また、排出量について見ると、家庭から排出される量が多いことがわかる。このようなバランスで、家庭排水は処理され、直接的に自然界に流出していく。
次に、環境影響を評価するための一般的なリスク評価は、藻類、甲殻類(ミジンコ)、魚類などの水生生物への影響が現れないと予測される無影響濃度と、定点観測・モニタリング測定から得られた環境濃度を比較して行っている(写真参照)。
まず、対象4種の界面活性剤の予測無影響濃度は、国内外の研究機関からが写真のように示している。単位は、μg/l(マイクログラムパー リットル)で、ppmの1000分の1を表す。
この予測無影響濃度と17年度のモニタリング結果、98年度から17年度まで20年間の最大値を示すと、いずれも予測無影響濃度よりも低い(写真参照)。
つまり、界面活性剤による生態影響へのリスクは、懸念される基準にないことが確認されたことになる。