ファンケルは、敏感な肌状態のメカニズム研究を進め、細胞同士のコミュニケーションを担うタンパク質「CCN1」が敏感な肌状態と老化の共通の要因である可能性を明らかにした。また、新規トレハロース化合物「トレハンジェリン」がその要因に対して有効な働きを持っていることを見出した。この研究成果は、北里大学大村智記念研究所および、北里大学医学部形成外科・美容外科学のそれぞれとの共同研究によるものだ。同内容は、第31回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)横浜大会2020(10月21日から30日)で学術発表し、ポスター部門の372件の発表から、優れた上位10件の発表の一つとして「Top 10 posters」に選出された。
研究内容としては以下の通りだ。まず最初に、「CCN1」のバリア機能への影響を調査。「CCN1」の発現を抑える処理を行ったヒト表皮角化細胞を使い、皮膚バリア機能の代表的な指標であるケラチン10の量を測定したところ、「CCN1」の発現が低い方が、ケラチン10を発現する細胞が増えることが分かった。この結果は、「CCN1」の発現を低く保つことにより、皮膚のバリア機能を維持できる可能性を示している。
次に、肌のバリア機能低下を誘導する「CCN1」が加齢により影響を受けるかを調べた。倫理的配慮のもと入手したヒト皮膚を用い、若齢層と老齢層の皮膚から表皮角化細胞を取り出して「CCN1」の量を測定。その結果、老齢層由来の細胞は、酸化ストレスにより「CCN1」が増加することを確認した。また、表皮に「CCN1」が多い皮膚組織について、その真皮の状態を観察すると皮膚の弾力に重要なエラスチンが少なく、老化の一つの要因になることが分かった。
これらの結果から、表皮に過剰な「CCN1」が発現すると皮膚各層に働きかけ、バリア機能の低下と真皮の老化の一因となる可能性が分かった。
一連の結果から、過剰な「CCN1」を減らすことで、皮膚のバリア機能を高めつつ、真皮の老化を抑制できることが考えられた。そこで、過剰な「CCN1」を抑制する成分を探索した結果、新規トレハロース化合物「トレハンジェリン」により、「CCN1」が減少し、酸化ストレスによる基底膜のコラーゲンや真皮エラスチンなどの細胞外マトリックスへのダメージを軽減できることを見出した。ファンケルではこれまで、トレハンジェリンが表皮に働きかけてバリア機能を強化する作用を報告してきていたが、今回新たに、トレハンジェリンが表皮の「CCN1」を介してバリア機能を高めることや真皮老化を抑制できることを確認した。