小林製薬の2020年12月期中間決算は、売上高が前年同期比4.5%減の661億8000万円、営業利益は同8.2%減の102億2000万円、経常利益が同5.2%減の110億2900万円と、国内外ともに新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響を受け減収減益。ただ、早期の段階で広告費などの調整を行った結果、純利益は0.2%増の82億1800万円と増益を確保した。
国内事業で特に大きなインパクトとなったのがインバウンド需要の減少だ。訪日中国人に人気の高い「命の母」「アンメルツ」などの医薬品を中心に売り上げが激減。約39億円ほどの減収要因となった。また、外出自粛により、インバウンド以外でも医薬品やオーラルケアカテゴリーが苦戦。一方で除菌・衛生関連品が約24億円増と大きく増収となったものの、2カテゴリーの減収分を補いきれなかった。
決算発表会で山根聡専務が国内事業の課題として挙げたのが、新製品の寄与率だ。過去4年で発売した新製品の売り上げに対する寄与率は、12年以降、平均20%前後で推移していたが、19年、20年と低下。20年上期は12.4%と、今後、売り上げをけん引するような新製品が求められる。
こうした状況の中20年秋に投入する新製品は、「これまでの市場改革が実を結んでおり、それぞれ市場に定着する確率が高いものがそろっている」(小林章浩社長)と期待を示す。また、ウィズコロナに向けた新製品を年内に10品発売する予定だ。基礎体力や粘膜バリアなど、免疫を高めたいという消費者意識に応えるものから、マスクムレ対策、身近な除菌アイテムなど、幅広く取りそろえており、こちらにも期待が集まる。また、既存品の訴求もコロナに合わせて再強化。外出自粛により需要が減っているオーラルケアなども改めて訴求する考えだ。
国際事業では、世界的な暖冬の影響によりカイロの売り上げが減少したほか、国内同様中国人観光客に人気の医薬品などが減収。中国本土においても、外出自粛によって店頭の構成比が高いカイロと、中国政府によって一時販売を規制された熱さまシートが減収。一方で、EC(国内・越境)は消臭元やランジェリー用洗剤などを中心に売り上げを伸ばし、前年同期比36%増と店頭での売り上げ減を補った。
2020年からの3カ年の中期経営計画では「国際ファースト」をテーマに掲げ、①全社挙げて国際事業の成長に取り組む②既存事業のレベルアップ③ESG視点で経営を磨く④イノベーションや新規事業創出の土台作り――に注力する。ただ、①でインバウンドを前提にしていた中国戦略は見直しを図り、インバウンドにあてる予定であった広告費用などを中国国内で運用することで、ダイレクトに現地ECでの購買を喚起するマーケティングに変更する予定だ。
20年12月期通期の業績予想は、コロナの影響を鑑み下方修正。売上高を前期比2.7%減の1540億円(期初計画比93.3%)、営業利益は0.9%増の259億円(同98.1%)、経常利益が0.9%減の276億円(同98.6%)、当期純利益が0.3%増の192億円(同96.0%)と見直した。
小林製薬は、22年連続で増益を達成しており、コロナ禍においてもこの記録を更新し続けるためにも、引き続き広告費の見直しなど経営コントロールを行う考えだ。