緊急事態宣言の解除で化粧の価値提案が本格化

「命に危険が迫ったとき、人間が健康を最優先に考えるのは当然だが、これまで力を注いできた美と健康を連動させる提案が思った以上に消費者に定着していなかったのは残念だ」。このように大手化粧品メーカーの役員が肩を落とすのは、新型コロナウイルスの感染拡大で、業績に大きなインパクトを受けたからだ。日本国内の感染者数が急増した2020年3月以降、消費財の売れ筋はマスク、消毒液、ハンドソープなどのコロナ対策品に集中。ドラッグストアの化粧品販売金額(インテージSRI)は3月が前年同月比15.06%減、4月が同17.72%減、5月が同17.28%と大幅減が続いた()。新型コロナという未曾有の事態は、化粧の存在意義を見つめ直すきっかけになった。冒頭の発言は、まさにそれを示唆している。

とはいえ、化粧の価値を問い直すのは、新型コロナとの共生が始まる「ウィズコロナ時代」が本番ではなかろうか。11年3月の東日本大震災を振り返ると、まず被災地が必要としたのは飲料水や食料、衛生用品だった。化粧品の活躍の場が生まれたのは、徐々に落ち着きを取り戻した数カ月後からだ。資生堂が無償提供したアイブローは、マッチの炭で眉を描いていた避難所の女性の心を癒した。震災を機に、人の心を豊かにする化粧の力が見直されたのはまだ記憶に新しい。新型コロナウイルスの感染拡大が一段落したいまこそ、化粧の価値を改めて提案することが求められている。

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