ファンケルは5月11日、静岡県浜松市が中心となって推進している官民連携プロジェクトの「浜松ウエルネスプロジェクト」において、認知症予防に関する社会実証へ向けた取り組みを開始したことを発表した。
ファンケルは、認知症予防を目的とした研究を、10年前から意欲的に行っており、今年1月からは、資本業務提携しているキリンホールディングス(以下、キリン)と、「脳機能」をターゲットとした共同研究のプロジェクトをスタートさせた。そしてこのほど、「浜松ウエルネスプロジェクト」で社会実証研究を進めるプラットフォームの「浜松ウエルネス・ラボ」に参画し、キリンと連携して認知症予防への取り組みを進めていく。
認知症は、「βアミロイド」や「リン酸化タウタンパク質」などの異常なタンパク質が、発症する20年以上前から脳の中に蓄積され、脳の萎縮や認知機能の低下などの病変が引き起こされることが分かっている(下図参照)。ただ、現在、認知症の治療法は確立されていない。
最近の研究では、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)時に適切な処置を講じることで、正常な状態に戻る可能性があることが判明している。つまり認知症は、早期発見や早期予防が有効であるということだ。
そうしたなか、ファンケルは、これまで嗅覚低下と脳内活動に関して研究を進めてきた。認知症患者では、特異的な臭いに対し、「臭いは感じるが、何の匂いなのかが分からない」という症状が出ることが分かっている。この症状は、簡便な嗅覚のチェックを行うことで、脳内活動の低下に気付く可能性が考えられる。
そこで、軽度認知障害(MCI)者を対象とした嗅覚機能を評価することにより、早期発見から早期予防の流れにつなげていくための探索的な研究を進めていくという。
今後の展開としては、キリンが研究開発を進めてきた「βラクトリン」をファンケルでサプリメントに加工し、軽度認知障害(MCI)者を対象とした効果検証として臨床研究を進め、早期予防への足掛かりとしていく考えだ。