都心に客はいつ戻るのか

各社の今期業績への影響は、決算期が2月か3月以降かでインパクトが異なってくる。百貨店は総じて減額修正が不可避だが、三越伊勢丹HDとH2Oは再減額の可能性も消えない。感染がいつの時点でピークアウトし、どう収束していくのかによって、来期の業績動向は変化する。東京五輪の開催の可否も消費マインドに影を指す。現時点で正確に見通すことは困難だが、株価は両業界の勢いを表している。

モノからコトへ、観光などサービスや「非日常」を楽しむ消費へ進化していた購買行動が、大きく巻き戻っている。感染リスクが減れば、多くは元に戻るはずだ。ただ、テレワークの普及など、経済が正常化しても一定程度は社会に定着する流れもある。今までより多くの時間と人数が自宅で過ごすようになると、ベッドタウンなど市街地の昼間人口が増え、都心部はその逆になる。

食べる食品の量は変わらなくても、都心部の居酒屋など外食には逆風が続くだろう。不採算な地方店を閉め続けた百貨店も、基幹店はターミナル周辺にあり、テレワーク従事者がわざわざ足を運ぶだけの吸引力がなければ収益の復元はおぼつかない。

一方、マスクやトイレットペーパーの特需で潤う食品スーパーやドラッグストアは、住宅街立地の店ほど売上高がそれほど落ちない可能性がある。ドラッグストアの特需効果は一巡感があるものの、自宅で本格的に仕事をするようになれば、オフィスのデスクやトイレを利用する頻度が減る。ボールペンなど筆記具も近場にて自分で購入するのではないか。

また、病院での感染リスクを考えれば、風邪など軽い症状は市販薬を飲んで済ませるのが当たり前になる可能性がある。調剤薬局で相談することすら危ないのならば、テレビ電話などで相談して、ネットで買えるものはネットで、ドラッグストアで買えるものはドラッグストアへと購買行動が変化するかもしれない。

一時的なショックによって国内消費が急激に落ち込んだ過去の例として、2011年の東日本大震災がある。震災が3月11日で、今回と同様に各社が収益予想を立てづらく、期初予想は厳しいものだった。ただ、11年度決算の着地では期初予想を上回った。今回は一時的な世界景気の後退という要素が加わる。コロナショック後の社会がどう変化するかで、百貨店とドラッグストアの明暗はいっそう如実になるのだろうか。