「当初、計画では新館の集客を1日3万3000人、年間1200万人を想定していたが、開業から10月9日までの集計では1日5万2000人の集客で、開業公開もあるが計画を上回っている。テナントの売り上げも計画比1.6倍で推移している」高島屋の木本茂社長は、2019年2月期第2四半期決算のアナリスト説明会で、力強くこのように説明した。

高島屋は、9月25日に日本橋高島屋の新館を開業。115店の専門店を誘致したショッピングセンター型だ。日本橋店という旗艦店では初めての挑戦で、玉川タカシマヤ、立川高島屋SCなどに続く取り組みだ。以前から、「百貨店を取り巻く環境は平坦ではない」と語っていた木本社長。そうした苦況を乗り越えるための答えが、賃料収入を主体としたショッピングセンター型。つまり、自前の売場にこだわるのではなく、“不動産業”へのシフトを鮮明にしたというわけだ。元々、100%子会社の東神開発が、玉川タカシマヤを始めとするショッピングセンターの開発を手掛けるなど、不動産業は本業の百貨店業に次ぐ第2の収益の柱となっていた。それを今回、さらにアクセルを踏んだ形だ。

不動産業へのシフトをめぐっては、大丸松坂屋百貨店を傘下に持つJ.フロントリテイリングが先輩格。松坂屋銀座店の跡地に複合商業施設の「GINZA SIX」を2017年4月に開業。百貨店の看板を掲げない徹底ぶりで、収益の大半を賃料収入で稼ぐ。それもこれも、婦人服を始めとする主力の衣料品が売れないからだ。確かに、同期決算は両社ともインバウンド消費という“神風”が吹いて表面上、百貨店事業も好調に映る。高島屋の百貨店事業の営業収益は前年同期比1.8%増の3837億円、営業利益は同7.2%増の443億円、J.フロントリテイリングも売上収益は同2%増の1346億円、事業利益は同7%増の124億円と、いずれも増収増益となっている。ただ、その中身を見てみると、高島屋に関しては大阪タカシマヤを始めとする店舗に訪日外国人客が押し寄せた結果、インバウンド関連の売り上げは前年同期比25.2%増の283億円、J.フロントリテイリングにしても大丸心斎橋店や東京店などを中心に40%増の282億円となっている。インバウンド消費について、「東京五輪まではこのまま好調に推移するだろう」と高島屋関係者は自信を見せるが、「その後いきなりなくなるとは思えないが、“神風”がいつまでも続くとは思えない」とも語り、「風がおさまったときに備えて、不動産業をさらに進化させ強固なものにしなければならない」と訴える。

2社以外の百貨店は、まだ自前の売場が多く本業勝負。“百貨店冬の時代”がさらに厳しさを増したとき、勝者と敗者がはっきりするのかもしれない。