高島屋の上海撤退は、当然の結果だった。2019年6月25日、高島屋の取締役会は、海外連結子会社「上海高島屋百貨有限公司」が同年8月25日に開催予定の株主総会において清算を決議することを前提に、同社の解散および清算を決議。この理由として、昨年来の米中貿易摩擦による経済低迷、個人消費の落ち込みなどを挙げている。だが、12年12月の出店を支援した中国企業幹部は「初年度から業績はかなり厳しく、撤退は遅すぎる決断だった」と明かす。

上海高島屋(上海市長寧区)の最寄駅は、地下鉄10号線「伊犁路駅」。虹橋空港から約20分だが、上海市の中心部とは言えない。日本企業の駐在社員が多く住むエリアだったが、それも近年は大きく減少。日本の化粧品メーカー幹部は「よくあの立地に開店したと思う。商圏人口が少なすぎる」と立地選定の誤りを指摘する。また、中国EC代理商の幹部も「虹橋空港からのトラフィックを確保するなど、運営に工夫が足りなかった。閉店は必然だろう」と厳しい見方だ。現地メディア関係者は、次のように話す。「上海高島屋の撤退の背景には、百貨店の顔である高級ファッションブランドを中国人が買わなくなってきたことと、オンラインショッピングが隆盛を極め、消費者がデリバリーを利用し買い物にいかなくなってきたことがある。こういった市場環境下、生き残っていける大都市の百貨店は商業集積度の高い、交通至便な市の中心部にある百貨店だけになってきている」。

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