正念場の百貨店業界
一方、袋小路にはまりこんだのが百貨店各社だ。
三越伊勢丹の2月の既存店売上高(19年9月末日に営業終了した伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店の実績を除く)は前年同期比14・3%減。ビジネスモデル再構築のため、店舗リモデルを進めている。三越日本橋本店が2018年10月に第1期リモデルオープンし、19年春から第2期リモデルに入っている。伊勢丹新宿本店も19年春から本館を段階的にリフレッシュしている。
三越伊勢丹HD、1月31日の第3四半期決算発表時に今2020年3月期の業績予想を減額修正。従来は前期からほぼ横ばい予想だったが、修正後は売上高が前期比3・5%減収、経常利益が28・1%減益予想となった。ただこの段階では、消費税率の引き上げに伴う消費マインドの低下、訪日外国人の伸び率鈍化によるインバウンド需要の伸び悩みまでしか織り込んでおらず、2月下旬以降の新型コロナウイルスの感染拡大による国内客の買い控えまでは反映されていなかった。3月16日に発表した3月前半(1〜15日)の店頭売上累計は、引き続き新型コロナウイルスの拡大が影響し、三越伊勢丹(既存店計)が37・5%、国内百貨店(既存店計)34・8%。さらに免税売上は新型コロナウイルスの拡大により先月同様に首都圏、国内百貨店ともに前年実績を下回った。さらなる業績予想の修正が現実味を帯びている。
大丸心斎橋店本館が昨年9月20日にグランドオープンしたJ.フロントリテイリング(以下、Jフロント)。大丸松坂屋百貨店合計の2月度売上高は前年同期比21・8%減と低迷。すでに新型コロナの影響が大きく出ている。渋谷パルコが新生、昨年11月22日にグランドオープンしたパルコ(3月18日に上場廃止)を完全子会社化したことが来2021年3月期から寄与してくる。持ち株比率が約65%から100%に上がることで、連結利益から少数子会社持分の35%が外部流出することがなくなる。パルコの2020年3月期の当期利益予想は66億円。来期の同社損益が横ばいでも、Jフロントの利益は23億円程度底上げされる効果がある。
エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)の2月の既存店売上高は前年同期比14・0%減。1月29日発表の第3四半期決算で通期予想を減額修正し、減益幅を拡大した。阪急うめだ本店を昨秋から今年四月までリニューアル中だ。また、中国で計画している「「寧波阪急」の開業時期を2020年秋に延期している。当初開業時期が18年秋だったものを19年秋に延期していたが、再延期で逆にコロナウイルスの直撃を避けられた形だ。
髙島屋の2月の既存店売上高は髙島屋単体13店舗で前年同期比12・4%減。うち免税売上高は約7割の大幅縮小。中国・上海の上海髙島屋は昨年8月25日に閉店し解散・清算する予定だったが、家主や上海市・長寧区の協力で事業採算性が高まるメドがたったとして閉店を中止した。解散・清算に伴う20億~30億円程度の損失はなくなったが、3月度の店頭売上(3月16日発表)は、15日までの累計が前年比マイナス32.9%、免税売上は同マイナス91.2%で推移。コロナ影響が長引けば、来期の収益を圧迫する可能性もある。
セブン&アイHD傘下のそごう・西武の2月の既存店売上高は前年同期比6・5%減だった。