モノ作りから価値づくりへ。エア・ウォーター・ゾルは、化粧品の受託製造で目指す企業戦略の中核となる新研究所を茨城県小美玉市に建設、3月10日から稼働を開始した。同社茨城工場の敷地内に建設され、地上3階建て、延べ床面積2630平方メートルで、既存研究施設の約4倍の面積。新研究所の「Value Creation Laboratory」の命名は、研究所の役割を端的に物語る。
同研究所は、1階エントランスの隣に、顧客の要望をその場で具体的に検討できる「オープンラボ」や、恒温恒湿室、恒温槽室を新たに導入。2階には、オープンラボ同様、顧客とタイムリーな製品作りを実現できる乳化実験室を用意したほか、オープンラボで調合した製品を直接評価できる官能評価室や肌機能測定器、素材開発のための細胞試験室や微生物試験室なども備えている。
実験エリアは、1階・2階ともにそれぞれ最大18名が実験できる大部屋式を採用。コミュニケーションルームも設け、研究員同士のコミュニケーションが活発な研究所を目指している。
研究員同士がコミュニケーションをとり、議論をしやすい環境を整えた新研究所のビションには「新しい領域への挑戦」、「マーケットニーズの創出」、「イノベーションとグローバル社会への貢献」の三つを掲げる。顧客の課題解決を実現するため、それぞれの観点から技術を進化させ、価値を創造していく考えだ。その中で、同社執行役員の鈴木昇研究開発本部長は、研究開発とともに「10~20年先のグローバル市場を想定し、輸出入に関わる各国法規制への対応なども現段階から強化していきたい」とグローバル化への具体的な対応についても意欲を示した。
中国EC法の施行や米中貿易摩擦に加え、新型コロナウイルスによる肺炎症状等の影響が大きく出ているとみられる化粧品受託製造業界だが、尾上英俊社長は「先行きが難しい今だからこそ、研究開発が重要となると考えています。お客さまへの価値を追求しながら、新研究所でそれを具現化するよう、中・長期的な視点で取り組んでいきたい」と研究開発の重要性を改めて強調。待望の新研究所稼働に寄せる、期待の大きさをうかがわせた。