地方・郊外で激減する百貨店の受け皿になる

ドラッグストアが高級化粧品の扱いに一石を投じるウエルシアホールディングス(HD)の新業態、ラグジュアリーコスメセレクトショップ「NARCIS(ナルシス)」がベールを脱いだ。1号店の出店地に選んだのはダイバーシティ東京プラザだ。ドラッグストアのイメージとかけ離れた高級感溢れる約130平方メートルの売り場には、「SHISEIDO」(資生堂)、「エスト」(花王)、「アディクション」(コーセー)などの国内ブランドと、「ディオール」、「エスティローダー」、「ランコム」などの海外ブランド合わせて17の高級化粧品が品揃えされた。開発に直接携わったウエルシア薬局の上村匡弘ラグジュアリー事業推進部長は、「正直、これまでドラッグストアに入ったことがないブランドばかりなので、(メーカーさんに)ご納得して取引していただくまでには、時間がかかりました」と産みの苦しみを打ち明けた。


7割が海外ブランド。17の高級ブランドが並ぶ(ナルシス ダイバーシティ東京プラザ店)

ウエルシアが高級化粧品の扱いにこだわる理由は、高価格帯市場の成長性と化粧品販売を取り巻く環境変化がある。高価格帯の市場規模は7500億円で前年比5%増と伸び率も一番高い。「成熟社会のなか、高価格帯の化粧品に興味を持っているお客様は相当数いる。そういう意味でも、海外・国内大手メーカーの高価格帯商品を何とか扱いたいと思って、前から準備していた。ようやくその一歩が踏み出せた」とウエルシアHDの池野隆光会長は出店の喜びを口にする。

池野隆光会長

化粧品市場の環境の変化は高級化粧品の売り場が減ってること。これまで高級化粧品の販売は百貨店の独壇場。ところが地方都市や首都圏郊外でも百貨店の閉鎖が相次ぎ、高級ブランドを扱うメーカーも販路が失われることに対して危機感を感じており、新しいビジネスパートナーを模索している。「地方で減少している百貨店の受け皿になりたい」と池野会長は語る。

とは言っても高級化粧品を扱う業態はイセタンミラーやフルーツギャザリングなどがあり、そことも競合することになる。そこでナルシスが差別化として打ち出すのがカウンセリングの強化。接客に当たる美容部員はウエルシア薬局で化粧品の販売経験を積んだビューティアドバイザーたち。ナルシスのオープン前に全ブランドの講習会に参加して商品知識を身につけており、経験豊富なビューティアドバイザーがカウンセリングを行うようにしている。

「一応、セミセルフ業態になっていますが、自分で選ぶだけではなく、売り場には小さいながらもタッチアップのカウンターを用意して、そういうツールを活用しながら、色合わせや、スキンケアなどのカウンセリングができる体制を整えています。ドラッグストアが展開する業態ですから、ビューティアドバイザーは、ドラッグストアで扱う低・中価格帯の商品知識や情報も豊富に持っている。それと併せてお客様の悩みにもしっかりと対応することができるようにした。それが既存のセレクトショップとの差別化になる」(上村部長)

今後、ナルシスは、4月5日までにダイバーシティ東京プラザに続き、ららぽーと柏の葉(千葉県柏市)、ららぽーと三郷(埼玉県三郷市)、ららぽーと立川立飛(東京都立川市)と立て続けに出店。ららぽーとに来店する客層は20代から30代の若いファミリー層が多い。必然的にそこがナルシスのターゲットにもなる。しかし、周辺にはウエルシア薬局の既存店が多く存在することから、上村部長は、「ウエルシアの中心のお客様である40代、50代にもしっかりとアプローチしながら、幅広い年齢層に支持されるような店づくりを目指していきたい」と語る。

目指すのは既存店でも高価格帯化粧品を扱うこと

ウエルシアHDは、これまでも高級化粧品の取り扱いにチャレンジしてきた。化粧品メーカーの厚い壁に対抗するため、わざわざ別会社にして、B.B.ON(ビビオン)という新業態を開発。高級化粧品の取り扱いを狙ったが、バラエティ系化粧品や、一部、通販系化粧品の扱いで精一杯だった。高級品メーカーの門戸を開くことができなかったのだ。

そこでウエルシアHDが選択したのが高級化粧品専門店MASAYA(マサヤ)の買収だ。自ら化粧品専門店を取り込むことで高級化粧品の取り扱いへの道筋を付けた。そしてマサヤの買収から3カ月後のラグジュアリーコスメセレクトショップ「ナルシス」の出店へとつながっている。

「ビビオンは低価格から中・高価格帯まで扱う店、マサヤは国内大手メーカーの高価格帯ブランドが中心、そして外資の高級ブランドはナルシスで扱うことで、低価格帯から高価格帯まですべてのブランドをウエルシアHDで扱うこともできるようになりました。だから従業員は、希望すればナルシスの美容部員としても自分の力を試すことができるようになるし、従業員にとって非常に励みになると思う。このことがナルシスを出したことの最大のメリット」(池野会長)

今後の焦点はマサヤ買収の効果をどのように発揮するかだ。池野会長は、「マサヤの高級化粧品の販売力に期待。人的交流を含めた取り組みも考えられる。マサヤ、ビビオン、ナルシスと一応、化粧品における全価格帯を扱う事業体の構築には成功した」と語る。その成果をいずれ既存業態のウエルシア薬局に取り入れたい考えもあるが、まずは高価格帯ブランドの取り扱いの習熟度を高めることに力を注ぐ構えだ。

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