古来、日本は大陸からの影響を受けており、化粧も中国大陸から伝わってきました。白い肌への美意識もそのひとつ。中国の多くの文献を引用してつくられた現存する日本最古の医学書『医心方』(平安時代)には、内服薬で色白の美人にする方法が記載されています。また、平安時代の貴族たちが親しんだ中国の漢詩文にも、白い肌の美しさを強調する美人像が表現されていました。

『医心方』(写)国立国会図書館蔵

約千年前の平安時代には、はっきりと白い肌への美意識がみられる日本。平安時代を代表する文学作品『源氏物語』でも、肌の白さを美人の描写に頻繁に用いています。例えば、「白く美しげに、透きたるやうに見ゆる御膚つきなど・・・」と、白くキレイで、透き通るような肌は、世にまたとないほど美しいと絶賛しています。

『源氏物語団扇画帖』国文学研究資料館蔵

さて、時は変わって美白市場が活況をみせる現代。日本の化粧品のホワイトニング機能は中国を含むアジア人観光客にも人気が高く、2015年以降の美白市場は大幅な拡大が続いています(2018年,富士経済調べ)。

ポーラ文化研究所が日本と中国の20~30代女性を対象に調査を行ったところ、日中共通して「肌の美しさ」に価値をおく美意識をもっていることが分かりました。しかし、美白ケアで目指す肌イメージは、日本では「透明感のある肌」、中国では「明るい肌」が1位に。また、美白ケアで目指す肌になった際の変化をたずねたところ、日本では「明るい気持ちになれそう」、中国では「自信が持てそう」といった『気持ちがポジティブに変化する』項目が上位にあがりました。日本・中国ともに、美白ケアは肌だけでなく、こころも満たすものなのかもしれませんね。

日本と中国の美白ケアで目指す肌イメージ

(川上博子・ポーラ文化研究所 研究員)

※クレジット記載のない図版は、すべてポーラ文化研究所提供

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ポーラ文化研究所は、化粧を美しさの文化として捉え、学術的に探求することを目的として1976年に設立されました。以来、日本と西洋を中心に、古代から現代までの化粧文化に関わる資料の収集と調査研究を行い、ホームページや出版物、調査レポート、展覧会などのかたちで情報発信しています。
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