ワトソンズの中国本土の業績が上向いている。親会社のHutchison Whampoa Limitedの発表によると、2018年1-6月期において、ワトソンズの中国本土における販売額は7%の増加を達成。全国に3500以上の店舗を持つ化粧品小売グループは、事業の転換と高度化に着手して2年で成果を出し始めた。同社が18年にオープンした様々なスタイルの店舗は、業績を伸ばすためにどのような効果を発揮したのか。そして19年の戦略の中心は何か。これらは中国化粧品小売業界の関心事である。

同社は長年、苦境に立たされていた。15年から17年の3年間の既存店売上高は、それぞれ5.1%、10.1%、4.3%も下がっている。ユーロモニターインターナショナルのデータでは、ワトソンズの一店舗当たりの収入と坪効率は12年以来年々減少し、16年から17年の下げ幅は拡大。17年の1店舗当たりの収入は492万元、坪効率は1.12万元/平米で、11年の半分にも及ばなかった。

同社は17年3月に改革を開始。ワトソンズCEOを引き継いだ高宏達は店舗のアップグレード、商品カテゴリーの調整など多くの転換の試みた。そして最近のデータを見ると、この改革は一定の成果を収めたことが分かる。

ワトソンズのサプライヤーの一人、張奇(仮名)は、18年のワトソンズの最重要かつ明確な効果をあげている事業は輸入品である、と明かした。高宏達は17年にワトソンズグループの100数店舗で試験導入した輸入品事業を、18年に1000店舗まで拡大。輸入品事業とともに商品構成の調整にも取り組み、BA(販売スタッフ)によるセールスが必要な商品、セールスポイントが類似している商品、実質収益のない国産ブランドを淘汰した。

高宏達は8月10日のワトソンズHWB健康美容大賞において、対中国戦略を発表した。その戦略は「店舗スタイルの継続的な改革」「良質なサービスおよび商品の高級路線化」が柱である。特に注目すべきは、18年のワトソンズは「トランスフォーマー」となり、全く異なるスタイルの店舗をたくさん設けたこと。これがワトソンズの競争力を理解するのに必要である。

01:トレンドショップ(潮品店)

ワトソンズのトレンドショップは、じつは17年に導入済みである。ワトソンズは8店舗目の出店を機に、店内の輸入スキンケア用品とメイク用品の陳列棚を増やし、さらに輸入品専門エリアを設けた。17年、輸入品専用エリアはワトソンズの100数店舗で試験的に運営され、18年には当該事業がワトソンズに承認され、1000店舗にまで拡大。そのうち北京、上海、広州、成都、深圳の全店舗に輸入品専用エリアが設けられた。

02:Colorlab

ワトソンズは、18年1月にロレアルとのコラボを発表し、中国国内でメイク用品のコンセプトショップであるColorlab by Watsonsを初出店した。知るところでは、Colorlab by Watsonsはロレアル傘下のメイク用品ブランドのロレアルパリおよびメイベリンニューヨークを採用。さらに店内に専門カウンターを設け、陳列されたこの二大ブランドの商品は店舗全体の総商品数の3割を占めた。店内では、常駐のメイクアップアーティストがメイクのアドバイスも行う。ロレアルグループ傘下のメイク用品ブランドだけでなく、日本や韓国のメイク用品のシェアも少なくない。

03:ワトソンズ×NetEase CloudMusicテーマショップ(屈臣氏网易云音乐主题门店)

18年5月30日、ワトソンズは網易雲音楽(NetEase CloudMusic)と共同で手掛けるミュージックテーマの店舗を広州市の中華広場にオープンした。一般的な店舗とは異なり、店内に電子音楽メイクルームが設けられており、消費者は「ミュージックテーマ」のメイクをリアルに体験できる。ワトソンズが網易雲音楽を選んだのは、明らかに若者の消費者市場の一層の拡大を狙ってのことである。

04:CKC18ショッピングコンセプトショップ(CKC18购物概念店)

昨年6月、ワトソンズは香港にCKC18という名のショッピングコンセプトショップをオープンした。メイク用品以外に、グルメ、ヘルス、人気ゲーム、アルコールなどのエリアが設けられており、よりスーパーのようである。

05:ピンクワールドカップテーマショップ(粉红色世界杯主题店)

ワトソンズが手掛けたピンクのワールドカップをテーマとした実店舗の中国1号店は、広州市のワトソンズ5号駐機坪ショッピングセンター店にあり、店舗のインテリアはすべてピンクを用いている。独特のインテリアスタイル以外に、店内には豊富なアイテムが揃っており、お客は海外の新商品を体験できる。しかし、当該店舗は期間限定店で、常設店ではない。

06:ドラッグストア(药房)

18年12月21日、中国本土でのワトソンズの大型ドラッグストア1号店が広東省仏山市禅城区の富凱国際ショッピングセンターにオープンした。外観のデザインを見ると一般的なワトソンズの店舗スタイルとは異なり、黄色の看板には「watsons pharmacy」という文字が記され、店舗の外観にも人目を引く「薬」のマークがある。

07:ワトソンズ×網易厳選ショップ(屈臣氏x网易严选店)

昨年末、ワトソンズは再度、網易(NetEase)と連携し、ワトソンズ×網易厳選ショップをオープンした。ショップでは主に高品質のインテリア用品、メイクアップ用品などを含む多種類の生活用品を販売している。

ワトソンズの19年戦略「三つのポイント」

ワトソンズ内では店舗を多次元に分類しており、規模に従って、大から小へ、それぞれsuper star、star、anchor、basic、babyに分かれている。また、ワトソンズの店舗スタイルが継続的に増加するにつれ、そのメインプロモーション内容に基づきトレンドショップ、メイク用品ショップ、クオリティライフショップなどに分けられる。ワトソンズが目移りするように多くの店舗をオープンするのは、何を売るか、誰が買うか、という問題を解決したいからである。店舗のアップグレードの根底には、三つの論理が流れている。

1:輸入品の取り扱いを引き続き拡大

試験導入から大規模展開について、19年のワトソンズの重点カテゴリーは輸入品である。張奇は、ワトソンズの現在の構想は、継続的に多種類の店舗スタイルを試すことだ、と話す。事業が低リスクで比較的高い実行可能性があると評定されると、数十店舗、百店舗に上る店内で試験販売を行い、成果を得られたら1000店舗に上る規模に展開する。また、ドラッグストア、網易厳選ショップなどの比較的大きな改革は、まずは試験的に1店舗をオープンさせる。

現在のワトソンズの成長状況を結びつけると、引き続き輸入品とメイク用品が19年の成長の重点となるに違いない。ワトソンズは18年、各カテゴリーの仕入れに対して輸入品販売比率30%以上という要求を出しており、店舗の輸入品のメインプロモーションは大きな方向性である。それ以外に、18年に試験的に設けたColorlabは、19年に大規模展開し、年間で1000~1200店舗に増加すると見られている。

張奇は、短期間ではあるが、ワトソンズのメイク用品の試みは成功したと見ている。Colorlabを手掛ける前のワトソンズのメイク用品のシェアは約15%、現在この割合は20~25%に向上している。そして、さらにメイク用品の成長を強化する目的について、次のように指摘した。

「そもそもメイク用品は少なかった。国産のスキンケア用品の商品棚をカットして、メイク用品にしたことで、店内の客単価とついで買いが向上した。その他、メイク用品は体験度の高いカテゴリーで、オンラインとの差別化に貢献した」

2:若者の購買習慣に適応し、ECプラットフォームを抱き込む

ワトソンズは18年上半期の財務諸表で、電子商取引能力の向上およびデジタルプラットフォームへの投資の継続を示している。つまり、オンラインプラットフォームの抱き込みに対して全力を注いでいると言える。

18年初め、天猫、菜鳥、ワトソンズが手を結び「定時配送」サービスをリリース。ワトソンズの200数店舗は「倉庫」に変身し、3キロ以内の購買者に配送する。その後まもなく、ワトソンズはさらに1700種類の商品を「餓了麼(Ele.me)」でオンライン販売し、年末にはオフラインの2500店舗のオンライン化を完了させる。

また、ワトソンズの中国全土の48重点都市の1200を超える店舗が「京東到家」に出店する。ワトソンズとMeituとの提携カードが昨年12月17日に中国大陸で正式にリリースされ、Meituユーザーは「BECウォレット」でワトソンズのメンバーズカードの登録ができ、ワトソンズ店舗への誘導となる。

有礼派の創始者・温敏はワトソンズの一連のやり方に大きく賛同している。彼は、プラットフォームとの提携では、かかるコストは注文に基づく割引ポイントで、売れなければ費用は発生しない、と話した。ワトソンズにとってこの形式は収益が非常に高く、一方では集客チャネルの拡大が追加され、3キロ以内の消費者をオンラインチャネルを通してカバーできる。さらに、消費者の前回来店時間と次回来店時間の間に、消費者に便利な購買チャネルをスピーディに獲得させることができる。

じつは、オンラインプラットフォームの抱き込みは、若者を引き付けて入店、消費してもらう方法であり、また実店舗においては、ワールドカップをテーマとした店舗でも、網易音楽をテーマとした店舗でも、ワトソンズは顧客の高齢化からの脱却に挑んでいる。

3:粗利率の高さがワトソンズの事業転換の武器

ワトソンズがなぜ短期間に大規模な改革ができたのか。それは過酷な提携条項により、比較的高い粗利益を保障したことにある。中国地区の店舗のEBITDA(利払い・税・償却前利益)粗利益率は20%をキープし、17年同期比でわずか1%しか下がっていない。

ワトソンズが試験的に輸入品を取り扱ってから、業界関係者は、輸入品の高めの割引がワトソンズの収益力に影響するかもしれないとしたが、明らかにそのような状況は発生していない。化粧品報の知ることろでは、これ以前にワトソンズが新たに仕入れたブランドは、必ず独占(独占代理、独占系列、または排他的)でなければならないという原則以外に、力を入れて取り入れた輸入品目にも、有名ではないブランドがある。これらの製品は多くがワトソンズの独占代理で、輸入した有名品とのセットにすることで粗利率を引き上げている。

複数のワトソンズのサプライヤーの話によると、高宏達のリードのもとで行った事業転換に対して、彼らがほぼ前向きな態度である。「はっきりしていることは、ワトソンズの輸入品、薬用化粧品、メイク用品が18年に猛烈な勢いで成長したということだ」、あるいはワトソンズのサプライヤーである通遼市の美之藍商貿有限公司の楊東昇総経理の言うように、まさに「ワトソンズの新方針は一応の成果を得た」ということである。

(記事:中国の化粧品業界紙『化粧品報』/協力:日中化粧品国際交流協会)