化粧品販売の「第8のチャネル」をつくる。化粧品メーカーのコーセー、業務用ヘア化粧品メーカーのミルボンが資本業務提携を結んだのは、2017年1月25日。両社が立ち上げたコーセーミルボンコスメティックスは、2年強の歳月をかけて両社の強みを持ち寄り、美容室専売化粧品ブランド「iMPREA(インプレア)」を開発した。それを19年3月18日、ホテルニューオータニ大阪で披露するとともに、美容室を百貨店、化粧品店、ドラッグストア、コンビニ、GMS、訪問販売、ネット販売に次ぐ、新しい化粧品販売チャネルにするために攻勢をかけると宣言。ミルボンの佐藤龍二社長は「日本の総人口、人口動態、美容は労働集約型モデル。この中でサロンの現在の経営課題を考えると、流通売上の向上はもちろんだが、サロン店販のビジネス化に貢献しないといけない。ヘアだけでは今後、大きなビジネスにしていけない。化粧品は大きなカギになる」と強い決意を語った。

ミルボンの佐藤龍二社長

18年総務省統計総人口、09・18年ミルボン経営指数調査を見ると、18年の総人口は09年比98%、18年の送客は09年比87%である。また、約10年で美容師のアシスタントは約3割も減少。美容室の経営は大きな課題に直面している。とはいえ、店販に取り組んでいる美容室(18年ミルボン経営指数調査)は、平均客単価(総売上)が前年対比101.20%、平均客単価(店販)が同比106.05%、店販購入客1人当たり購入は同比104.83%で、店販に取り組む美容室は確実に成長している。同調査で店販購入客比率の変遷を見ると、16年は16.2%、17年は15.2%、18年は15.5%で、横ばい傾向が続く。言い換えれば、伸び代は十分に残っており、美容室経営の安定化には店販購入客比率を高めることが近道というわけだ。

まず大阪で、インプレアを披露

コーセーミルボンコスメティックスがヘアケアと化粧品の年間購入金額を比較したところ、後者の方が1.6倍も多いという。ヘアケアは使用アイテム数が3~4個、使用シーンは基本夜のみ、リピート周期は約2.5ヶ月。化粧品は使用アイテム数(メイク含む)が5~10個、使用シーンは朝と夜、リピート周期は約1.5ヶ月。同単価(5000円)での年間購入金額を比較すると、シャンプー500ミリリットルは年間購入回数は約5回、年間購入額は2万5000円。ローション200ミリリットルは年間購入回数は約8回、年間購入金額は4万円となる。

昨今、化粧品の情報は氾濫している。コーセーミルボンコスメティックスによると、情報量はこの数年間で約40倍になっており、消費者はどの化粧品を使ったらいいのか悩んでいる。以前は敷居が高いと言われたデパートコスメが見直されたのは、カウンセリング販売の長所が再認識されたこともある。だからこそ、顧客の滞在時間が長く、会話を交わす機会が多い美容室には「チャンスがある」(コーセー・小林一俊社長)という。

コーセーの小林一俊社長

「インプレア」は「Change Your Impression by Beauty Authority」を掲げ、美容師による印象革命を提案する。美容室は、一人一人の個性を見極め、それぞれの美しさを提供できる唯一の場所であると考え、その強みを活かしたコミュニケーションメソッド「印象プロデュース」を通じて、お客に自分らしい印象の変化を届けるという。

「印象プロデュース」は、お客のなりたい印象を的確に捉えるメソッドで、ポイントは髪と顔。「インプレア」は、両方が合わさることで、一つの印象をつくっていると考え、互いに共通となる印象を軸にすることで、髪だけにとどまらない様々な美容提案を可能にする。

インプレアは美容師のスキルを活かして、肌印象をプロデュースする

「インプレア」は、肌印象の鍵を握る、肌の最表面にある「角層ケラチン」に着目。角層の約80%を占める「ケラチンタンパク質」は、健康な肌状態では水分を保持し、うるおいのある柔軟な肌状態となる。しかし、紫外線などのダメージを受けると水分量が低下し、乾燥によるくすみ等の肌印象の低下につながる。そこで「インプレア」は肌印象に関与する「角層ケラチン」の理想的な水分量に着目し、「健やかな角層」に導くことを目指した。

インプレアは、スキンケアとメイクアップ商品(18品目23品種)を取り揃える

今回、コーセーとミルボンそれぞれが培ってきた研究を礎に、肌と毛髪の共通構成要素「ケラチンタンパク質」の共同研究を行い、肌印象に関係する「角層ケラチン」のダメージを分子レベルで解析し、可視化することに成功。大型放射光施設「SPring-8」を用いた研究により、新知見として「角層ケラチン」がダメージを受けるとその構造が崩れ、本来は離れにくい結合水まで減少し、角層の保湿力が低下することがわかった。

インプレアのメイク品

「インプレア」は、ケラチンを多く含む角層を効果的にお手入れできる処方「ケラチンリペア処方」により、コーセーオリジナル成分「ベビーアップルエキス」を配合。主な商品には、肌との親和性に優れたアミノ酸由来の生体類似成分でできたカプセル内に「ベビーアップルエキス」を内包することで、角層に長く留まり、長時間うるおい効果が持続する。うるおいバランスの整った、健やかな角層から生み出される、美しいキメの 整った肌に導くという。

インプレアのスキンケアとメイクアップ商品(18品目23品種)は、2019年4月1日から一部の美容室で順次取り扱いを開始。9月1日に全国発売する。価格は、税抜きで500~1万円である。