介護時のニオイ問題は深刻化するばかり。介護現場の不満・不便を解消するブランド「エールズ」を展開するエステーは、「介護のニオイ問題」を考えるセミナーを11月9日に開いた。同社のビジネス開発事業部の岡部豊部長は「(エールズのニオイケア商品を使った)社員の知り合いの家族から、介護の部屋に人が集まるようになったと言っていただいた。介護を普通の生活シーンにする商品をつくっていく」と意気込みを語った。
在宅介護現場におけるニオイ悩みは根深い。エステーが調査した「介護時の困りごと(図1・n=461)」を見ると、「介護時のにおい」は4位にランクイン。だが、ニオイに対する悩みは、断トツトップの「自分の精神的負担」にリンクするから、ニオイ悩みの解消は重要な課題といえる。排泄用具の情報館「むつき庵」の浜田きよ子代表は次のように説明する。
「ニオイはいわばプライドにかかわるものですから、排泄のニオイ、その部屋のニオイについて、臭っていると指摘するのは非常に難しいことです。また、その部屋(空間)だけでの問題にとどまらず、介護が必要な方を抱える家族から、『ニオイが気になって人を家に招くことができない』という相談も受けたことがある。その家で暮らす方々にとって、辛い臭いはストレスなどにつながるため重要な問題なのです」
高齢化が進む日本において、介護時のニオイに悩む生活者は増えていく。「2018年版高齢者白書」(内閣府)によると、要介護・要支援が2040年までに800万人を超える見込みだ。しかも、15年4月から特別養護老人ホームへの新規入居者は、原則として要介護3以上の高齢者に限定された。「2018年版高齢者白書」によると、800万超の要介護・要支援のうち、要介護3までの構成比は約73%になるという。現状、同居の家族が介護をしている割合は6割超で在宅介護率は高いが、さらに増えるのは間違いない。在宅介護の負担軽減は喫緊の課題である。
浜田代表によると、介護のニオイ問題の解決には、次の三つが重要である(図2)。①ニオイの原因を探り、それをこまめに清潔にする、②介護空間に残る特有のニオイの対応を考える、③介護にストレスは付きもの。抱え込まず、相談してみること。例えば「むつき庵」では、メーカーの協力を得て、排泄に関する用具を約900種類取り揃え、相談者の現状をヒアリングした上で、適切な用具の推薦、使い方の指導などの情報提供を行っているという。
その一つがエステーの「エールズ」。同社は、消臭分野の知見を活かし、介護空間に存在する特有にニオイを分析。一般的に介護現場のニオイは尿や便が原因とされているが、さらに湿布臭が混じり合った複合臭であることを明らかにした。成人男性の寝室でも検出される「汗臭」「加齢臭」に加え、介護空間に存在する「尿臭」「便臭」、さらに「湿布」のような臭気を持つサリチル酸メチルが介護空間に存在することを確認。商品開発に使用する擬似臭にサリチル酸メチルを添加することで、「エールズ」の消臭効果をさらに高めることに成功したという。18年11月15日に置き型タイプをリニューアル発売する。
介護空間専用のニオイケアを広く普及させるには、店頭での情報伝達、価値訴求が重要な鍵を握る。とはいえ、一般的なドラッグストアを見ると、介護用品売り場は店の奥で、店員の商品知識も不足しがち。これでは介護に悩む生活者に高機能商品は届かない。高齢社会の日本において、介護市場は拡大するに違いない。価値ある商品をいかに生活者に届けるか。製販一体の取り組みは、社会課題の解決に貢献しながら、ビジネスを成長させる好機である。