利用者の拡大と高付加価値化が成長をけん引
美容機器メーカーが歯科医院に販路を広げ、通販企業が4000円を超えるハミガキを投入。菓子メーカーはガムを日常のオーラルケア用品として位置付けを直し、調剤薬局では薬剤師が高齢者の口腔機能を支えようとしている。ハミガキや歯ブラシを中心に発展してきたオーラルケア市場に、異なる技術や顧客基盤を持つ企業が集まるのはなぜか。従来のハミガキや歯ブラシの需要を奪い合うだけでなく、オーラルケアに積極的に取り組む人を増やし、一人当たりの支出額も高めることで、市場そのものを拡大できると考えているからだ。
日本では1989年から「8020運動」が進められてきた。その結果、厚生労働省の2024年歯科疾患実態調査によると、80歳で自分の歯を20本以上保つ人の割合は推計61.5%に達した。しかし、歯が残っていても、十分に嚙み、飲み込めるとは限らない。加齢に伴う口腔機能の衰えは、栄養状態や社会参加にも影響する。東京大学高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター 教授の飯島勝矢氏らが提唱・研究してきたオーラルフレイルは、口の小さな衰えに早期に気付き、健康状態の悪化を防ぐ重要性を示している。歯を守る予防から、食べる力や健康寿命を支えるケアへ。市場が提供する価値は広がっている。これまで健康管理の中心に口の機能を置いてこなかった人にも、ケアの必要性を伝える余地がある。疾病の予防だけでなく、日常生活の質を保つための習慣としていかに定着させるかが、需要の裾野を左右する。
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