ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、液状ファンデーションの衣服への色移りを新たなアプローチで抑える技術をまとめた論文で、日本化粧品技術者会(SCCJ)の第27回SCCJ優秀論文表彰「ACST誌優秀論文賞」を受賞した。同賞は、化粧品技術の発展に寄与する優れた論文を表彰するものだ。
液状ファンデーションは、衣服への色移りを抑えようとすると、乾燥感や化粧膜の硬さが増すなど、使用感との両立が難しいことが課題だった。従来は塗布後の乾燥を早めることで色移りを防ぐ手法が一般的だったが、快適な使い心地とのバランスを取ることが容易ではなかった。
そこでポーラ化成工業テクニカルディベロップメントセンター中谷明弘主任研究員らのチームは、乾燥の速さではなく、塗布後に形成される膜の構造そのものに着目。同社が得意とする「粉体乳化」の手法を活用し、微細なシリカ粒子で乳化した新しい液状ファンデーションを開発した(図1)。
これを肌に塗布すると、表面では乳化滴中の水分が蒸発し“乳化滴の抜け殻”に由来する微細な空隙をもつ多孔構造(ポーラス構造)が形成される。一方で、膜内部はしなやかさを保つため、さらっとした表面性と快適な使用感を両立できる。
この多孔構造により、ファンデーション膜は潤いを保ったまま表面のみすばやくさらっとした状態となり、衣類との直接接触を抑えるバリア層として機能する。その結果、まだ乾ききっていない状態や、摩擦・圧力が加わる条件でも高い耐付着性を示し、色移りを最大90%低減することが示された。
液状ファンデーションの衣類への色移りは、日常の使いやすさや満足度に関わる重要な課題として認識されている(図2)。表面のみをすばやくさらさらにする構造制御によって、衣類への付着を抑える新しい設計概念を示した。メイク直後の着替えや摩擦が生じる場面でも、色移りしにくい高い耐付着性が期待される。
同技術はファンデーションにとどまらず、サンスクリーンやメイクアップ製品全般への応用も期待され、化粧品の機能設計に新たな可能性を広げる。
中谷主任研究員は「珪藻土のバスマットに着想を得て、表面はさらっと、中は潤いを保つという理想的なファンデーション膜の設計を目指した研究です。快適な使用感と衣服への高い二次付着抑制を両立し、生活の中のストレスを大幅に軽減する新技術にご期待ください。ポーラ化成工業は、グループ理念『感受性のスイッチを全開にする』のもと、今後も生活者視点に立った研究開発を通じて、機能性と使い心地を兼ね備えた化粧品の創出に貢献していきます」とコメントした。
中谷研究員は2010年に入社後、スキンケア、サンケア、ベースメークと幅広い処方開発に従事。微粒子で乳化を行うピッカリングエマルションなどを活用した新剤型研究に取り組んでいる。

























