コーセーは、化粧品の学術団体である日本化粧品技術者会(SCCJ)が発行する学術誌である「SCCJ誌」および「ACST誌」で、それぞれ掲載した論文が2025年度の最優秀論文賞を受賞した。両論文では、口唇の荒れには見た目だけでは分からないタイプがあることや、グローバルな肌に共通して対人印象を高める三つの反射光パターンがあることを明らかにした。
SCCJ誌の受賞論文は、「唇表面状態の連続観察による荒れ特徴解析」で、執筆者はコーセー外尾恵美氏、山野井睦氏、宇田川史仁氏。
口唇はバリア機能が低く、荒れやすい部位であり、ケア方法としてはリップクリームの塗布が一般的だ。しかし、リップケアに対するユーザー調査をした結果、「リップクリームを塗っても皮むけする」など、改善効果を得られていない層が存在することが分かった。そこで、口唇の荒れ状態にもいくつかの種類があり、その違いこそがケアの効果実感に差を生んでいるのではないかと仮説を立て、さまざまな口唇の状態や荒れ実感について解析を行った。延べ141人を対象とした口唇の表面状態の観察から、目視で皮むけなどが確認できる従来の荒れである「状態A」に加えて、皮むけはないものの荒れ実感のある「状態B」が存在することを発見した(図1)。
また、口唇が良好な状態と比較すると、状態Aは水分量が低く表面が硬い傾向にあるのに対し、状態Bでは水分量は同等だったものの水分の蒸散量が高いという特徴があることが分かった。さらに、日本・中国・米国を対象としたアンケート調査において、「状態A」だけでなく「状態B」に該当する人が一定の割合で存在することが示された。今回の研究により、口唇の荒れにはタイプがあり、それぞれに対応した製品開発が必要であることが示唆された。
ACST誌の受賞論文は、「Discovery of Global Common Denominators of Skin Reflectance that Enhance Attractive Impressions(魅力的な印象を高める肌の分光反射率における世界的共通因子の発見)」。執筆者はコーセー柿本涼氏、柿沢英美氏、竹下卓志氏、小竹山祐輝氏、五十嵐啓二氏、増渕祐二氏。
同論文では、多様な個性を尊重するグローバルなニーズに応えるため、単に肌の欠点を隠すのではなく、一人一人が思い描く魅力的な印象を引き出すことができるファンデーションの開発に取り組んだ。着目したのは「分光反射率」という、物体に当たって反射した光が持つ色パターンだ。まず、アジア系、コーカシアン、アフリカンアメリカンなどを含む多様な人種の「肌の分光反射率」のデータを独自の手法で統計解析することで、グローバルの肌色を六つのカテゴリーに分類した。次に、光の色や強さを自在に操作できる「多波長可変実験室」にて、44人のさまざまな肌色をもつ実験参加者にあらゆるパターンの光を照射し、分光反射率と対人印象の関係を調査した。
その結果、グローバルの肌色すべてに共通して対人印象を高める三つの反射光パターンを見いだした。①「Elegant(上品さ)」や「Clear(透明感)」を引き出す「紫または青」の反射光、②「Warm(温かさ)」を感じさせる「オレンジまたは赤」の反射光、③「Lively(生き生きとした)」や「Healthy(健康的)」な印象を与える「青と赤の両方」の反射光である(図2)。
さらに、それぞれのパターンを強調するファンデーションを開発し印象評価をしたところ、このパターン通りに対人印象を高められることが確認できた。この成果は顧客が求める対人印象をかなえるベースメイク商品などへの応用性がある。
両受賞は同社のメイクアップ製品における技術や研究水準の高さを示すものであり、高品質な製品開発に欠かせない基盤技術となる。同社は今後も科学的な視点に基づいた機能性や顧客への新たな価値提供を目指した研究開発を推進していく。























