ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、シワのある肌に特有の凹凸構造に着目し、化粧水のうるおいを肌全体に行きわたらせ、安定してとどめる「凹凸フィットベール技術」を開発した。さらっとした化粧水は凹凸の底に溜まりやすく、とろみのある化粧水は凹凸内部に入り込みにくいという課題に対し、自社独自に確立した肌なじみが良いナノエマルション技術などを応用することで、シワ溝の側面にまで密着する“うるおいベール”の形成を目指した。

シワ形成の一因として、乾燥により皮膚の柔軟性が失われることが知られており、シワのケアにおいて保湿は重要な要素の一つだ。一方で、高保湿タイプの化粧水を使用していても、「シワが気になる部位では、乾燥感が残る」と感じるケースも少なくない。背景には、シワのある肌では表面の凹凸が複雑に入り組み、化粧水が「広がりにくい・入り込みにくい・とどまりにくい」という特性が挙げられる。粘性が低いさらっとした化粧水は、塗布後すぐに凹凸の底へ流れ落ちるため、肌表面全体に均一に広がりにくく、シワ溝の底に溜まりやすい(=側面にとどまりにくい)など、部分的な“うるおいの抜け”が生じやすくなる。一方、とろみのある化粧水は肌表面では広がりやすいものの、凹凸の内部にまでは入り込みにくいという課題がある(図1)。

そこで同研究では、シワのある肌の複雑な凹凸にも化粧水がすみずみまで行きわたり、うるおいがとどまり続ける「凹凸フィットベール技術」の実現を目指し、とろみのある化粧水をベースにしながら表面での広がりやすさ・凹凸への入り込みやすさ・側面への密着が両立する処方設計に取り組んだ。

同技術では、油剤を微細化したナノエマルション技術を搭載することで肌なじみを高め、とろみがありながらも凹凸の奥まで入り込む設計とした。ナノエマルションとは、20~200ナノメートル程度の微細な粒子径をもつエマルションのことだ。水系処方の中に油剤を微細に分散させることで、化粧水らしいみずみずしい感触を保ちながら、油剤由来のエモリエント効果(肌をやわらかく整え、しっとり感を与える効果)や、機能性油剤を角層へ届けやすくする働きなどが期待できる。そのため、水溶性の保湿剤を主体とする化粧水と比べて、高いうるおい感や、肌のふっくら感、なめらかな手触りといった実感価値を設計しやすい技術として活用される。

一方で、ナノエマルションは製法によって状態が大きく変わることが知られている。同一組成であっても、作製条件の違いにより安定性や粒子状態が変化する(図3)。同研究には、これまでポーラ化成で確立した「界面活性剤の溶存状態をコントロールする特殊なナノエマルション製法」を応用した。

さらに、親油基(油になじみやすい部分)を持つ高分子を組み合わせることで、シワ溝の側面にも密着し、うるおいのベールを保持する構成としている(図2)。これにより、従来は凹凸のある部位で生じやすかった保湿の偏りに対し、化粧水をまんべんなく行きわたらせ、うるおいをとどめることが期待される。

モデル素材を用いた検証の結果、「凹凸フィットベール技術」を組み込んだ化粧水は、表面での広がりに加えて、凹凸の内部に入り込み、側面にも密着することが確認された。ナノエマルションの配合による肌なじみ効果を評価するため、肌なじみの指標として人工皮革に滴下した際の接触角を測定し、なじみやすさが向上したことが確認できた(図4)。

また、凹凸へのフィットを溝側面モデルおよび微細凹凸モデルで評価した。その結果、ナノエマルションと親油基をもつ高分子を組み合わせた凹凸フィットベール技術の化粧水は、側面(勾配面)へ密着しながら下方まで到達すること(図5)、シワのある肌に見立てた凹凸内部へと入り込みとどまることが確認された(図6)。これらの結果から、同組み合わせは凹凸形状に対して「広がる・入り込む・密着してとどまる」挙動を示すことが示唆される。

ポーラ化成工業は同技術を、シワのある肌の保湿課題に向けた処方設計の選択肢として、今後の研究開発に活用していくとしている。