世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本における研究開発部門であるロレアル リサーチ&イノベーション ジャパン(ロレアルR&I)のエバリュエーション・インテリジェンスチームはロレアルグループ・ブランドのTAKAMIの協力のもと、脳波計測(EEG)を用いてスキンケアにおける顔面塗布ジェスチャーの違いによって誘発される情動指標を研究し、その結果を国際的な化粧品関連学術誌であるインターナショナル・コスメティック・サイエンスに発表した。

ストレス水準が上昇し、ウェルビーイングへの関心が高まる現代社会において、顔面マッサージのジェスチャーは、女性の快適性およびウェルビーイングを向上させる手段の一つとして注目されている。標準化されたジェスチャーによってEEG上に誘発される四つの情動指標(ストレス、快適性、感情価〈valence〉、および覚醒度〈arousal〉)を特徴づけ、それらの経時的変化を明らかにした。

測定は38~55歳の健常女性17名を被験者とし、単施設被験者内比較試験として行った。2種類の実験的かつ標準化されたジェスチャー(QおよびS)を、2日間にわたり各被験者に対して実施した。ジェスチャーQは60秒間でスムージングおよびハンドプレス動作から成り、ジェスチャーSは同じく60秒でスムージング動作のみとなっている。

被験者は各塗布前に洗顔を行い、自己評価質問票に回答した。施術中、被験者には携帯型脳波計(EEG)を装着し、美容施術者が、特定のジェスチャー手順(コントロールジェスチャーの後にQまたはS)に基づいて、眼周囲および頬部に化粧品を塗布した。EEG測定は塗布前、塗布中、および塗布後に実施され、その後、被験者は再度自己評価質問票に回答した。

EEG解析により、ジェスチャーQは、施術開始20秒後から一貫してポジティブな情動(快適性、感情価、覚醒度)の変化を誘発した。一方で、ジェスチャーSではストレスのわずかな低下が認められたのは40秒後以降であり、塗布後にはネガティブな感情と関連する低い感情価が優勢に認められた。(図参照)ジェスチャーQはジェスチャーSに比較して、塗布中のストレスがより低く、より快適であり、さらに塗布後にはより高いポジティブな感情価(valence)を示すことが確認され、これらの結果は自己評価質問票の結果とも一致していた。

携帯型EEG装置による解析は、美容体験中の情動を捉え、識別するうえで高い可能性を示した。ジェスチャーQは被験者の情動状態に肯定的な影響を与え、その結果は被験者の自己報告とも一致していた。ジェスチャーの進行に伴って捉えられた情動の変化は、化粧品の塗布過程における重要な瞬間の特定に寄与した。自己評価質問票と組み合わせることで、これらの知見はユーザーエクスペリエンスの向上・開発に貢献すると考えられる。

(*:有意な変化)図:ジェスチャーQとジェスチャーSによる各情動指標の時間的変化

出典:Sawako Yamamoto, et al. “Changes in emotional response towards different facial application gestures following skincare application: An electroencephalogram approach”, Int. J. Cosmet. Sci. 2026 Feb 9. doi: 10.1111/ics.70086