ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、異なるオイルを配合した2種類のエマルション滴をクリームタイプのクレンジングに安定配合する技術を確立した。これによりそれぞれのエマルションに含まれるオイルの機能を引き出すことに成功した。高いクレンジング力と保湿感を両立し、メイク落としでありながら保湿スキンケア品のような使用感を可能にする。
クリームクレンジングには一般的に、メイク汚れの溶かし込みに優れたクレンジング用オイルの他に、肌の保護に優れた保湿用エモリエントオイルが使われている。それらの機能を引き出すには、クレンジング用オイルはすっきりと洗い流し、エモリエントオイルは肌に残すことが重要な鍵となる。
しかしこれまでの技術ではエマルション中で両オイルが均一に混ざり合っているため、オイルの洗い流しやすさを改善するとエモリエントオイルも流されてしまい、逆にエモリエントオイルを肌に残そうとするとメイク汚れを含んだクレンジング用オイルも一緒に残ってしまうというトレードオフの関係にあった。
そこで着目したのが、異なるオイルからなる二つ以上のエマルション滴を一つのクリーム中に共存させる「複合エマルション」技術だ。複合エマルション技術は、ポーラ化成工業が独自に蓄積してきた技術で、洗浄用製剤への応用に成功したのは同研究が初めて。油分を多く含むクリームクレンジングでは複合エマルションの実現が難しいとされていたが、乳化剤を適切に使い分けることで、クレンジング用オイルのエマルションと、エモリエントオイルのエマルションを別々に、かつ安定的に共存・維持させた「デュアルエマルション」とすることに成功した。これにより、クレンジング用オイルを効率的に洗い流し、エモリエントオイルは肌に残りやすい設計が可能となった(図1)。

クリームクレンジングは、油性のメイク汚れを溶かし込むため、多量の油が少量の水の中に閉じ込められている。そのため、ひしめき合っている油滴同士がぶつかり、融合や互いの油分の交換が起きやすく、異なる二つのエマルションを混ぜてもやがては均質なエマルションになってしまう(図4左)。
一方、今回開発したクリームクレンジングでは、水と油、そして乳化剤の配合バランスを最適化し、エマルションが均質化しにくい状態を実現した(図4右)。

クリーム中に2種類のエマルションが別々に存在しているか調べるため、クレンジング用オイルのエマルションを赤の蛍光色素で、エモリエントオイルのエマルションを緑の蛍光色素で染色し、一つのクリームに配合しエマルション滴を観察した。
このクレンジングクリームを顕微鏡で観察すると、2色のエマルションの滴がたくさん存在する様子を見ることができた(図5)。これにより、2種類のエマルションを混合してもクリームクレンジングの中で別々に維持できていることが確認できた。また、分子運動が活発になる高温下でも共存状態を維持できることが確認された。

また、洗浄後にエモリエントオイルが角層に吸着するかを検証した。まず、赤の蛍光色素で染色したエモリエントオイルのエマルションをクリームクレンジングに配合し、すすぎ中の条件を再現するために水と混ぜた。角層細胞をこれに浸して水ですすいでから観察すると、角層細胞全体が赤く光って見えたことから(図6)、エモリエントオイルが角層細胞の表面全体に均一に吸着しているものと考えられた。

モデル実験において、開発品のクレンジング力は自社従来品と比べて明確に向上していることが確認された(図2)。また保湿感も、専門評価者による使用感評価において高評価を獲得した(図3)。このことから、メイク汚れをすっきりと除去しつつもエモリエントエマルションのベールを残すことに成功していると考えられる。

























