I-neは2025年8月1日、自社初となる研究所「日本美科学研究所(Japan Beauty Institute of Science and Technology、通称JBIST)」を設立した。インハウスラボを併設した同拠点は、同社の強みであるファブレス体制を生かし、差別化技術の内製化と商品化工程の外部連携を両立。これまでにないハイブリッドな「ファブレス型R&D」を実現するものである。
従来、R&Dは独自成分や特許による差別化、技術ライセンス展開などを通じて企業価値を高める源泉として機能してきた。その一方で、自社工場は開発やコスト面において柔軟性を欠く側面もある。同社は創業以来培ってきたファブレスでの商品開発の知見とOEM・ODMパートナーとの強固なネットワークを生かし、ファブレス型R&Dという独自の発想に至った。技術に縛られないマーケティング視点を起点とした市場創造型の開発体制を構築し、スピードと独自性の両立を目指すという。
JBISTの「ファブレス型R&D」モデルでは、差別化技術や独自処方のプロトタイプ、エビデンス構築など核となる部分は同社で開発・特許化する。それと同時に製剤化や量産などに関しては、OEM・ODMパートナーと連携。これにより大規模な設備投資に依存せず、高度な商品開発が可能となる。
加えて、マーケティングと研究開発を融合し、生活者インサイトに基づいた研究テーマの設計と社長直下の機動的な意思決定体制により、「売れる・選ばれる・続けられる」商品づくりを支える研究開発組織を目指す。このような体制によって、「自社工場を保有せずとも、高品質な商品開発・供給」「多様なOEM・ODMパートナーとの共創によるオープンイノベーション・オープンディベロップメントの実現」「生活者ニーズや市場の兆しに応じた、タイムリーかつ柔軟な商品開発体制の構築」が可能になる。
同社は、併設のインハウスラボを活用し、プロトタイピングや検証を迅速に進行。26年にはJBISTから生まれた研究成果を商品としてリリースする見込みである。また、コンソーシアム型の共創が本格始動する。JBISTをハブとして、社内外の技術・知見・人材を有機的に結びつけるコンソーシアム体制を築く。すでに開始している、日本化粧品領域で国内トップレベルのドラッグデリバリーの知見を持つ佐賀大学の徳留嘉寛教授との連携をはじめ、アカデミアとの共創を本格始動し成果を順次発表するとともに、外部の専門家やパートナーとも共創し、高度でユニークな開発を推進する。そしてAIなどを活用したライトアセット型R&Dによる少数精鋭・高機動型ラボを実現するという。処方設計や品質管理など、人的資源やリードタイムを要するプロセスに、AIなど最先端のクリエイティブテクノロジーを活用。従来のR&Dでは難しかった小規模でもイノベーションを創出できるラボシステムの構築を目指す。★
月刊『国際商業』2025年11月号掲載