皮膚は最強のバリアとして人体にとって不都合な物質や環境から我々を守っている。一方で化粧品や医薬品は、人類にとって好都合な有効成分を皮膚内に送達させるために、このバリアを突破させたいと考えている。この二律背反に正面から立ち向かう技術がドラッグデリバリーシステム(DDS)である。近年の化粧品に一定の有効性が求められるという市場トレンドの中、有効性の観点はもちろん、安全性の観点からも皮膚のDDSの技術が脚光を浴びている。さらに技術の発展とともに新しい皮膚のDDS技術が台頭し始めていることも見逃せない。そこで前編と後編に分け、皮膚透過・経皮吸収の仕組み、最新技術の概要、直面する課題、そして将来展望について、学術的視点も交えながら解説する。

皮膚のDDSのメカニズムとは

皮膚のDDSは、作用を期待する場所に応じて二つに大別される。一つは局所作用型製剤(外用剤)、もう一つは全身作用型経皮吸収製剤(TTS)である。局所作用の場合は「皮膚透過」、全身作用の場合は「経皮吸収」と呼ばれる。1800年代後半まで、物質が皮膚を透過するかどうかは不明であったが、1900年代初頭には脂溶性物質が水溶性物質よりも速く透過することが確認された。それ以来、経皮吸収のメカニズムや関連性が研究され、皮膚透過と経皮吸収の理解が進んできた。

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