ファンケルは、シワやたるみのメカニズムの解明の一つとして、皮膚の弾力を維持する役割を持つコラーゲンについて、加齢や外的刺激によるコラーゲン「量」の減少と、形などの「質」の変化に着目して研究を行っている。

今回、紫外線のダメージによってコラーゲン線維の柔軟性が失われ、質の悪いコラーゲンを生み出す細胞に、「加水分解コラーゲン」や「ビタミンC誘導体」を加えることで、柔軟性が失われず、本来の柔軟性を持ったコラーゲン線維を生み出す効果を発見した。本研究結果で、加齢や紫外線によるダメージに影響されず、柔軟性を持ったコラーゲン線維を生み出すことで、シワやたるみを防ぐという新しいアプローチが期待される。

なお、本研究は、金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)との共同研究成果によるもので、成果の一部は2024年9月に東京都で開催された第33回日本バイオイメージング学会学術集会で発表した。

本研究では、皮膚の線維芽細胞に紫外線のUVAを照射した後、数日間培養してコラーゲン線維を作り出し、コラーゲン線維の柔軟性を計測した。その結果、紫外線照射によるダメージを受けた細胞から生み出されたコラーゲン線維は、ヤング率(物体の柔軟性を表す指数。率が大きいほど変形しにくいことを表す)が紫外線ダメージのない細胞に対して3倍以上も増加しており、柔軟性が失われていることが分かった。

柔軟性を失った質の悪いコラーゲン線維を産み出す細胞を、柔軟性を持ったコラーゲン線維を産み出す状態に改善するための化粧品素材を探索した結果、紫外線ダメージを受けた細胞に対し、「加水分解コラーゲン」と「ビタミンC誘導体」を加えることで、生み出したコラーゲン線維のヤング率が、紫外線ダメージを受けていない場合と同程度になることが分かった。

このことから、この成分の組み合わせにより、紫外線ダメージを受けても柔軟性を持った質の良いコラーゲン線維を生み出せることが示唆された。

さらに「加水分解コラーゲン」単体でも、紫外線ダメージを受けた際に生み出すコラーゲン線維の柔軟性に対する効果を検証した。

その結果、「ビタミンC誘導体」の併用時と同様に、生み出したコラーゲン線維のヤング率が、紫外線ダメージを受けていない場合と同程度になることが分かった。このことから、紫外線ダメージを受けても「加水分解コラーゲン」単体を細胞に加えることで、柔軟性を持った質の良いコラーゲン線維を生み出す効果があることが示唆された。

これまで同社では、コラーゲン線維の「質」の一つである「柔軟性」に着目し、「原子間力顕微鏡」を用いて皮膚の線維芽細胞が産生したコラーゲン線維の柔軟性評価を開発、それにより紫外線のダメージでコラーゲン線維の柔軟性が失われることを報告している。

実際に日光を浴びた皮膚内部で起こり得る変化や化粧品素材による改善効果が確認できたことは、コラーゲン線維の柔軟性を維持してシワやたるみを防ぐという新しいアプローチにつながることが期待される。

ファンケル総合研究所 基盤技術研究センター 皮膚科学第三グループ 上 麻佑子研究員は、「これまでの実験方法では、コラーゲン線維が本当に良い状態なのか、量や形などでしか確認できませんでした。本技術は、新しく生まれてきたコラーゲン線維の質の一つである柔軟性を数値として可視化することができ、本当に質の良いコラーゲン線維を生み出すことが確認できました。今後は、柔軟性に着目した新しいアプローチのアンチエイジング化粧品や、新たなシワやたるみのメカニズムの研究に応用していきたいと思います」とコメントした。