佐藤久美子(さとう・くみこ)
1996年から化粧品輸入ビジネスに従事。「スイスライン」「ユイルエボーム」といったブランドを日本市場に導入。エコサート認証コスメとの出会いをきっかけにオーガニックコスメのセレクトショップ「オーガニックマーケット」をオープン。1999年よりSLJ代表取締役。
小売りの独自性を映し出す売り場づくり
熱気にあふれた展示会場を後にして市場調査に向かう。まずは会場すぐ近くの百貨店サマリテーヌへ。ここはLVMH本社前に鎮座する、2021年6月に復活した老舗百貨店だ。展示会の喧騒に比べ、店内は人も少なく静かだ。高級志向過ぎるのだろうか。きらびやかな百貨店ブランドのカウンターブースが美しく立ち並ぶ先に、クリーンビューティーを集めた一画がある。セルフコーナーになっていて、数えてみると70ブランド近くのスキンケアとヘアケアがひしめき合って棚に並んでいる。美容機器やコットンやポーチなどの雑貨もこのコーナーにある。来店客はブランドのカウンターブースより多いくらいで、みなさん思い思いに商品を見比べている。
販売スタッフは誰もいない。訪れた時間帯のせいなのか、化粧品売り場全体に来店客が少なく、買い物目的ではない私は居心地が悪い。並んでいるブランドのチェックを済ませ、私のパリの定点観測地、ボンマルシェへと移動することにする。創立40周年を迎えたこの百貨店は、記念のスペシャルディスプレイがとてつもなく見事だ。来店客も多く人気の限定商品を取り合いしているようにも見える。限定デザインの小物やコラボ商品が集約された特設会場を横目に、〝世界一美しい化粧品売り場〟と称されるグランドフロアを一通り見る。化粧小物のコーナーが見当たらないな、と思いながら一つ上の階に設けられているビューティーコーナーに向かう。以前より売り場面積がぐんと広くなっている。ヘアケア、ボディケア、スキンケアとカテゴライズされたコーナーにはクリーンビューティーが盛りだくさんだ。見覚えのある日本製の美容機器や美容雑貨、化粧筆やヘアブラシも置かれているのを見てうれしくなり、売り場の販売スタッフに、「おすすめのオーガニックスキンケアはどこにありますか?」と聞くと、にっこり笑って「ここにある製品はすべてクリーンビューティーで、全部がおすすめよ!」と答えてくれる。質問の意図とはちょっとずれているものの「クリーンビューティー」というワードが着実に定着しているのだと実感する。しかしながらラ・フレンチ・ビューティーを見た後のせいか、分かりやすさに欠けるような気になってしまう。
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