社員の活躍の場は大幅に増える
――組織風土、社員の意識を変える仕掛けはありますか。
小林 じつは日本販社や現地法人の役員(非常勤)に、次代を担う社員を就けました。現場に近いところに行ってもらうことで、各ブランドが抱える課題、現地化の重要性などを肌で感じ、学んでもらいます。説明責任も伴いますから、文字通り、経営者人材の育成に直結する取り組みです。社員が急成長することに期待しています。
――中長期ビジョンの定量目標にグローバルキーポスト人材充足率を追加。これも人材の成長を促すきっかけになりませんか。
小林 グローバルでの事業成長は、現地の優秀な人材を招いて、国・地域の生活者ニーズや商習慣などに基づく戦略を描き、実行することが大事。しかし、その権限委譲は、ルール無用というわけではない。創業者の小林孝三郎の座右の銘は「正しきことに従う心」。これは当社グループで働く全員が守るべき「行動憲章」です。またコーセーの活動理念は「良い商品を、良いお店で、きちんと売る」です。これらのコーセーの哲学を世界中で実現するには、現地に精通した人材と、自社の強みであるエンゲージメントの高い人材のコラボレーションが必要です。そのバランスが取れると、ビューティコンソーシアム構想は狙い通りの進み方をするでしょう。ですから、コーセーの社員には、若いうちから優秀なグローバル人材と一緒に仕事に打ち込む機会を与えたいと思っています。
――各国の生活文化を知る社員が増えるほど、現地企業との協業の機会は増えますからね。
小林 その通りで、中国、韓国、タイ、インドネシア、インドなど、各国の現地企業を見ていると、優れたアセットを持っているんですよ。コーセーの強みを提案すれば、必ず興味を持ってもらえる。だからこそ、たくさんの市場や企業を知る人材を増やすことは、ビューティコンソーシアム構想に追い風になると思います。
――「脱・自前」の推進には、コーセーの強みを磨き続けることが必須。研究開発や商品開発の強化は、どのように進めますか。
小林 その鍵を握るのは、コーセーの本拠地である日本です。これまではグローバル化を強く意識し、世界各国の市場に導入しやすいモノづくりに取り組んできましたが、それは「脱・自前」の現地化でカバーする。ですから、必ずしも世界中の規制に対応できていなくてもいいから、ユニークで、競争力があり、新カテゴリーを創出するような、誰もがアッと驚く商品を開発しよう、と発破をかけています。そこから得た知見は、コーセーの新しい強みになり、海外市場でも応用できる。つまり、コーセーグループらしいモノづくりの強化は「脱・自前」の基盤になるということです。
――それだけ本社、研究所、販社がある日本への期待は大きい。
小林 そもそも日本はコーセーグループの強みを最も発揮できる市場です。おかげさまで、好調なブランドが多く、実績も高まっていますが、よりデジタル戦略を強化し、顧客体験の変革などを実現し、圧倒的な存在感を確立しなければいけない。また日本販社の構造改革をより一層進めて、効率的な営業体制を築くことも必要です。日本事業に稼ぐ力があるから、コーセーグループは今後10年間で2000億円の投資を行える。ビューティコンソーシアム構想とは、日本で稼ぎ、グローバルに投資。世界中のビジネスで生まれた利益をみんなで享受する仕組みです。コーセーグループのステークホルダー全てが幸せになるよう、中長期ビジョンに臨みます。★
月刊『国際商業』2025年02月号掲載