――2025年も引き続き資生堂ジャパン 社長 CEOとして日本事業をリードされます。2024年の成果を踏まえ、今後どのように変革を進めていかれますか。
藤原 まず、資生堂が「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」となるために、グローバルでの構造改革をさらに加速させます。当社にとって優先すべき取り組みを明確にし、当社のコア領域であるプレステージスキンビューティー領域で「力強いブランド体制の確立」を進めていきます。
その中で日本事業は、グローバルをリードする存在になることを目指し、昨年から進めている「ミライシフトNIPPON 2025」を完遂し、選択と集中によるグローバル・コアブランドやヒーロープロダクトへの投資、新市場創造マーケティングなど、昨年成果を残した取り組みを一層加速させてまいります。
生活者から支持され、圧倒的に愛されるブランド・価値づくりに向け、資生堂ジャパンは、エリアの責任者がエリアの事業経営者として迅速な意思決定を行うことのできる組織とし、生活者・お客さまに最も近い営業現場へ権限・責任を移譲します。そして社員全員が「生活者起点・持続的な成長・稼ぐ」の判断基準で、プロフェッショナルとして役割機能を発揮・協働していくことで、日本事業のさらなる成長につなげます。
PBPは、一人一人の生産性を最大化し、一人でも多くのお客さまと出会い、生活者一人一人に寄り添ったパーソナルな美の提供を実現することを目的に、全国各エリアに新設される「パーソナルビューティー部」に所属する体制とし、チャネルを横断(デパートを除く)してエリアの生活者の集まる場所で活動していくことによって、美容職の価値を最大化させます。
PBPは、お客さまから求められるための提案力と技術力を持っているプロフェッショナルです。新たな組織、チーム体制、そして活動を通して、生活者一人一人に寄り添ったパーソナルな美の創造・提供を強化しお客さまから選ばれ続けることにつなげてまいります。
一方で、PBPの所属が支店ではなくなりますが、営業担当との連携は強化していきます。定例のコミュニケーション環境はきちんと整備し、応対・買場・施策など、エリア・店舗での出会いの最大化、得意先愛用者拡大への貢献に繋がる活動構築、そして売上目標の確認とその達成に向けた活動計画、店舗での活動環境、入店時のルールの確認など、きめ細やかにコミュニケーションを行い、店頭活動の最適化につなげます。
2025年の新体制において、日本事業のビジネストランスフォーメーションを完遂するためには、私たち経営陣のリーダーシップが極めて重要だと考えています。新体制においては、多様な経験を持つダイバーシティーに富んだリーダーが、現場と一体になりながら、持続的な成長に向けて決して変革を後戻りさせず、実行に対して確実にコミットしていきます。資生堂ジャパンはOne Teamとしての結束力が強い組織です。昨年、変革を進める中で社員との対話の機会も多く持ち、数々の意見交換・対話を続けてきましたが、その中で私は当社に「決めたことを着実に実行する風土があること」を感じています。これは当社の大きな強みの一つです。私は社員に対して「一人ひとりの自己革新が資生堂の未来を創る」と伝えてきましたが、社員との対話の中でまさに、変革を自分事化して前進させようと挑戦をする社員がいることに勇気をもらい、今後の変革に向けた多くのヒントを受け取りました。
2025年、資生堂ジャパンの全社員が、職掌や役割にかかわらず、One Teamとなって、変革をやり遂げていく所存です。
――2025年度、日本事業の方向性はどのようにお考えでしょうか。
藤原 まず、昨年「ファンデ美容液」で成功した新市場創造マーケティングでは、次なる取り組みを進めてまいります。日本の化粧品市場を盛り上げていくために、新たなカテゴリーの創造や生活者から広く支持される商品を出していくことは、私たちの使命だと考えています。
そしてグローバル・コアブランドの取り組みやヒーロープロダクトも継続して強化することによって、圧倒的に愛されるブランドづくりを実現します。そこから捻出された利益を新市場創造へ投資するというサイクルを回していき、熱狂的なファンを増やしていきたいと考えています。
クレ・ド・ポー ボーテやSHISEIDO、エリクシールなどのコアブランドは、話題化している商品を軸として次なる取り組みをそれぞれ進め、積極的な投資によってさらなる成長につなげます。
新たな価値伝達と専門店のみなさまとの協働により成果が出ている、ベネフィーク、inouiについても、昨年の取り組みを決して一過性のものとせず、引き続き協働させていただきたいと考えています。昨年、導入店がさらに拡大し売り上げも伸長しているエフェクティムは、美顔器と美容液の組み合わせによるビューティーリフトの実現という独自の魅力があり専門店さまの強みであるパーソナルな提案力があってこそ届けることができるブランドとして、専門店さまのさらなる差別化に貢献してまいります。
また、生活者・お客さまの価値観や情報収集の手段、購買行動の変化を捉えて専門店さまと私たちが共に成長していくために、OMOを進化させ、新しいお客さまづくりをご一緒させて頂きたく存じます。そして、OMOを目指すからこそ、店頭の重要性がより高まると、私は考えています。デジタルでの体験を進化させることも重要ですが、店頭での価値提供、感動体験を通じて、生活者のエンゲージメントを高める最も重要なタッチポイントへ進化させたいと思っています。専門店さまをチャネルで一括りにせず、1店1店が自らの強みや個性を最大限発揮し、「百店百様の感動体験」をお届けできる、そんな姿をぜひ共に実現していきたい所存です。
――最後に専門店へのメッセージをお願いします。
藤原 昨年、専門店さまと目指したい新たなパートナーシップの在り方として「互いに自立し、高めあう協働関係」をご案内いたしました。この協働関係の実現に向けて、2024年は「共に稼ぎ、共に成長する」ことをテーマとしたさまざまな取り組みを実施させていただき、専門店さまとご一緒に歩みを進められましたこと、改めて御礼申し上げます。
今年はさらなる成長へつなげるべく、「既存ブランドの着実な成長×新市場の創造×OMOによる新たなお客さまづくり」の取り組みで、みなさまと共に、化粧品専門店業界における新たなパートナーシップ・持続的成長を実現してまいりたいと思っております。協働でこのビジネストランスフォーメーションを完遂し、「共に稼ぎ、共に成長する」べく、社員一同、全力を尽くしてまいります。 私たち資生堂は、生活者のインサイトを捉え、新しい価値・カテゴリーをつくり話題化させる市場創造マーケティングで、生活者の「使ってみたい」という欲求・欲望を作り出すことに果敢に挑みます。
地域のことを最も良く知り、日本に美容法を定着させるなど世の中に先行して化粧文化を創ってきた専門店のみなさまには、これからの時代も、生活者の変化を捉えた取り組みと、さらに未来の変化を創り出すこと、つまり専門店ならではの体験価値を高めることを通じて、専門店さまと資生堂でお互いに高めあう協働関係を実現したいと考えています。専門店さまと一体となってさまざまな価値を生み出し、生活者に驚き、喜び、ときめき、感動、発見を提供し、生活者が幸せに生きる、そんな世の中にできると私は信じています。それこそが、このビジネストランスフォーメーションを通して実現したい私の想いです。
2025年、資生堂ジャパンは新体制となります。私たち経営陣も、エリアの支社長をはじめ、現場と一体となって全社員で専門店さまと真摯に向き合い、取り組みを進めてまいります。
専門店の皆さまには2025年も引き続き、厚いご支援・ ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。