――2024年を振り返り、具体的な成果についてお聞かせ下さい。
藤原 圧倒的に愛されるブランド・商品づくりに向け、選択と集中によるグローバル・コアブランドとヒーロープロダクトへの投資と取り組み強化を進めてまいりました。例えば「クレ・ド・ポー ボーテ」では、スキンラグジュアリー×サイエンスのブランド価値を精鋭化し、多くのヒット商品が生まれています。その中でも、昨年9月、5年ぶりにリニューアル発売した「ル・セラムⅡ」は、原宿で実施したPOPUPイベントを皮切りに話題化し、店頭での肌実感「アメイジング体験」を通じて価値を届け、力強い成長に繋がっています。
また、エリクシールについて、こちらも9月に発売の「ザ セラム」は、生活者が美容液に求めるニーズに応え、SNS上でも多くの発話が生まれたことが奏功し、過去最大の予約数を記録しました。発売から10日で累計出荷数が52万本を突破するなど、こちらも大きな成果となりました。
そして、新たな市場創造に向けた「ファンデ美容液」の取り組みも大きな話題となり、SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション、マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッドの2品は、いずれも既存品でありながら過去最高の売り上げ・シェアを記録する大ヒットとなりました。「まるで色付き美容液」など、もともとSNS上で発話されていた生活者の声からファンデ美容液のコンセプトをつくり、「美容液でファンデを包むから美容液がずっと肌に触れる」という技術を、生活者からの美容効果に対する評価の声と一貫した訴求を行ったことで、生活者が納得しやすいコミュニケーションを実現しました。そのことから、生活者の良質なUGC(口コミなどの消費者発信コンテンツ)が拡大され、さらなる話題化と高い評価につなげることができました。社内においては、価値開発と生活者への伝達に向けて、各部門がそれぞれ役割を発揮しながら、部門を超えて横断で連携し、営業担当やパーソナルビューティーパートナー(PBP)など現場社員の意見も積極的に取り入れながら施策を進め、全社一丸で新市場の創造に取り組みました。
また、生活者とより能動的に出会うためのタッチポイント戦略では、「人の集まる場所で勝つ」ことと、生活者の価値観や購買行動の変化を捉え、コンシューマージャーニーのあらゆるポイントで驚き・感動を提供するためのOMOの取り組みに注力してきました。
専門店さまにおいても、積極的にBeauty Keyの登録促進と活用を進めていただき、お客さまとの関係性の深化に繋げていただいています。また、専門店さまで得られる化粧体験とベネフィットをフックに生活者を店頭へ送客する「WOW体験プロモーション」では、デジタルでの情報発信により店頭送客を図り、パーソナルカラー診断など店頭でしか受けることのできない体験価値をお客さまに伝達していくことによって、店頭送客数・体験人数は計画を上回る成果を残すことができました。
化粧品専門店専用のECプラットフォーム「Omise+」は、昨年6月に手数料改定を行い、参加店も拡大しました。より多くの専門店さまにご活用いただく中で、Omise+利用メンバー数は昨年の2倍にまで拡大し、売り上げも好調に推移しています。Beauty KeyメンバーによるOmise+の利用も増えており、お客さまがどこにいても買いたい時に専門店さまを利用することができるOMOが進み、利便性向上と購入機会の拡大を専門店さまの売り上げへの上乗せにつなげることができています。
また、専門店さま自らSNSで情報を発信することで生活者との接点を拡大し、得意先ECやOmise+を活用したお取り組みから成長につなげられている事例も数多く聞いております。今後もみなさまと共に、生活者の価値観と購買行動に対応した新たなビジネスモデルを構築して、専門店さまと一体となった持続的な成長につなげていきたいと考えています。
――ベネフィークやinouiなど、専門店ならではの取り組みはどうでしたか。
藤原 ベネフィークは昨年、香りのグラデーションで肌・からだ・心を満たす「香吸美容」をキーワードに新たな価値開発を推進してきました。特にブランドをけん引した「ベネフィーク セラム」は専門店さまに積極的にお取り組みいただき、一昨年の発売から引き続き好調に推移し、ベネフィーク美容液のアクティブメンバーが2万人以上拡大するなど、ヒーロープロダクトとして確立しています。化粧水・乳液についても、昨年6月のリニューアル以降、回復基調に転じ、秋冬にはクリーム、サプリ、新施術プログラムが導入されたことで、ライン愛用者育成に必要な基盤が整いました。
inouiは昨年、待望のカラーメイク発売とベースメイクのラインナップ拡充により、ブランドのファンづくりを加速させました。特にリキッドファンデーション・アイシャドウ・チークが市場から高く評価いただき、ベストコスメ100賞の受賞を達成しました。ブランドのアクティブメンバー数は、カラーメイク発売の2月から半年間で2倍以上に拡大しました。そして、専門店さまの店頭での併売促進のご紹介により、1人当たりの平均購入個数が2・7個と、複数購入者が増加し、売り上げ拡大につなげることができました。
また、専門店さまとのお取り組みとして、昨年は「チェインストアキャンプ」を本格展開し、リード店の約3割のみなさまに、全国9会場でご参加いただきました。これは、お店さまと当社社員が、共に1店1店の未来の姿を明確に握り合い、専門店さまの「ありたい姿」の実現に向けたロードマップを策定し、長期的に売上と生涯顧客を拡大させていくことを目的としていました。未来を想定し専門店さまと資生堂ジャパンの社員がひざ詰めで議論し言語化することにより、多くの気付きを得られたというご意見や、店舗の未来に真剣に向き合えたことに対する前向きなご意見を多数頂戴しました。参加した専門店さまからとても高い評価をいただいています。それぞれの化粧品専門店さまで決めた内容を起点に、今後も継続して得意先1店1店のビジョンを実現するための継続的な提案活動を強化してまいります。