資生堂は、「女性活躍からジェンダー平等へ」をテーマとした実証結果を、多様な人財の活躍と企業成長の関係を研究する「資生堂DE&Iラボ」の「資生堂DE&Iラボサイト」に公表した。

女性活躍に取り組み長い道のりを歩んできた資生堂には、DE&I推進のヒントとなる幅広いケーススタディがある。「資生堂DE&Iラボ」は、資生堂の知見やデータ、経済学的アプローチによる検証をもとに、多様な人財の活躍と企業成長のつながりを実証し、学びを社内外に公表することで、日本社会のDE&I推進に寄与することをねらいとしている。2023年2月に発足し、2024年3月に「資生堂DE&Iラボサイト」を立ち上げた。資生堂のこれまでの取り組みから得た学びを「ACTIONS」、東京大学の山口慎太郎教授のチームと共同で進めている、多様な人財の活躍と企業成長の関係についての実証研究で得た結果を「RESEARCH」として公表している。

資生堂は、早くから女性活躍に取り組み、上司や本人の意識改革、働き方改革、雇用慣行の改革など、様々な施策を行ってきた。その結果、現在国内資生堂グループの女性管理職比率は40%を超えているが、社内には女性管理職比率が低い組織があることも事実だ。今回、東京大学の山口慎太郎教授のチームと共同で、そのような組織にスコープをおき、ジェンダー不平等をもたらす要因を統計的因果推論により検証した。

2024年4月に公表した前編では、成果を発揮する能力にジェンダーの差は見られなかったものの、難易度の高い役割を担う確率は男性の方が高い組織があること、また一部の職位(グレード)では男性上司は女性部下よりも男性部下に高い評価をつける傾向があることが明らかになった。これらはアンコンシャスバイアス(先入観や思い込みから判断や意思決定に偏りが生じる現象)が原因ではないかと仮説を立て、後編では組織のバイアスに着目した検証を行った。

バイアスを可視化したところ、女性の方が男女平等意識が高く、同時にアンコンシャスバイアスも高いという結果が得られた。これは、女性は男性に比べてジェンダー平等を強く意識している一方で、内面では「女性らしさ」「男性らしさ」に縛られやすくなっている、板ばさみの現状を表しているといえる。また、組織の同質性とバイアスの関係として、女性管理職比率が極端に低いまたは高い組織では、アンコンシャスバイアスが強い傾向が見られた。これは、ジェンダーバランスの偏りが組織のバイアスを強める可能性を示唆しており、組織のリーダーのジェンダーバランスの均衡を図ることが、バイアス軽減につながる重要な一歩であると考えられる。また、前編での調査結果から想定していた「上司が強いジェンダーバイアスをもつ」という仮説は支持されず、バイアスを特定の層や個人の問題ではなく、組織全体の課題として捉える必要があることが分かった。これらの知見を踏まえ、組織が真のジェンダー平等に向けて前進するためには、以下のようなアプローチが効果的だと考えられる。

1.ジェンダーバランスの均衡を図る:ジェンダーバランスの均衡を図り、組織のリーダーの同質性を解消し、多様な視点を取り入れる。

2.全社的なアプローチ:特定の層だけに向けてではなく、組織全体の課題として捉え、組織の一人ひとりがバイアスに向き合う機会を得ることで、偏った決めつけや当たり前を疑い、異なる考えに気づき受容できる文化を醸成する。

3.継続的な検証:定期的に組織のバイアスを測定し、結果に基づく対応策を見定める。

これらのアプローチは、多様性を尊重し、公平な機会を提供し、異なる視点を受け入れるという点で、DE&Iの概念と深く結びついている。組織の文化として定着させることが重要であり、一過性ではなく継続的な取り組みとして常に検証と改善を繰り返す必要がある。すべての従業員が自身の潜在能力を最大限に発揮できると信じられる組織の実現、真のジェンダー平等に向けて、資生堂DE&Iラボは、これからも組織変革につながる調査を続けていく。