[PR]トップインタビュー ツジカワ社長 辻川 豊

世界に誇る彫刻技術の可能性を協業で掘り起こす

ツジカワは日常生活を支える縁の下の力持ちだ。世界を見渡しても、他社の追随を許さない彫刻技術を生かして、化粧品や日用品はもちろん、食品、IT製品、家電、自動車、スポーツ製品、雑貨、筆記具・文具製品、医薬・医療品など、多種多様なカテゴリーの特殊印刷用金型・刃型・治具などを手掛ける。日本中の生活者が日々目にする商品の多くに、ツジカワの技術が使われている。だから、ツジカワの技術を頼る企業は多く、2024年9月期の売り上げは過去最高値を更新した。10月23日から25日まで東京ビッグサイトで開かれるアジア最大級の包装(パッケージ)総合展「東京国際包装展(TOKYO PACK 2024)」に出展する狙いを含め、同社の辻川豊社長にビジネスの状況について聞いた。

ツジカワの辻川豊社長

ツジカワの辻川豊社長

グループ力を生かし何でもカタチにする

――業績は好調です。要因は何でしょうか。

辻川 おかげさまで、多くのお客さまに支えていただくことができました。カテゴリー別の数量を見ると、コロナ下のマスク特需が落ち着いた衛生材料関係は減っていますが、その他はコロナ前の水準を上回っています。インバウンドを含む観光客を対象とした商品の活性化とトレーディングカードなどのホビー分野の隆盛が業績拡大に寄与しています。改めて、私たちのビジネスは日常生活と密接にかかわっていることを実感しています。

――日用消費財の一つである化粧品についてはいかがでしょうか。

辻川 繊細な加飾を施す高級品の仕事は増えています。国内の消費者だけでなく、訪日客の購入も増えているからではないでしょうか。高級品以外の受注は全盛期には及びませんが、コロナ前の爆買いはバブルみたいなものですから、その水準に回復することはなかなか難しいと思います。一方で、加飾を施さないシンプルなパッケージが増え続けています。これまで消費者ニーズを引き出すのに一役買っていたパッケージや容器などが同質化していくことに危機感があります。

過去に国際商業オンラインに掲載されたツジカワのバナー広告画像。ツジカワの型とそれによって加工された製品が対比されている(※クリックすると各金型を紹介するツジカワのホームページが表示されます)

――ツジカワは提案力を磨く必要がありますね。

辻川 一つはやはり環境対応です。例えば、私がインド現地法人に出張した際の話ですが、宿泊したホテルには紙を使用したアメニティが非常に多くなっていました。SDGs(持続可能な開発目標)が世界的な流れだということを改めて認識しました。SDGsへの取り組みは企業の社会的責任の一つですから、私どもは環境対応の提案を強化しようと考えています。その一例は、よく卵の販売容器などで使われるパルプモウルド(段ボールや新聞の古紙を主原料として製造する紙製の成型品)に、ツジカワの技術を使って加飾することです。簡素ですが、環境にやさしいパルプモウルドも色々な商品に使えるようにならないか、と考えています。また、紙コップにエンボス加工を施すことで断熱効果を持たせることにより、熱いコーヒーを入れても持ち続け易くするなど、色々な彫刻技術の活用法があります。

シルキーモウルド(パルプモウルド)への加飾サンプル(協力:上六印刷株式会社)

シルキーモウルド(パルプモウルド)への加飾サンプル(協力:上六印刷株式会社)

紙カップ断熱エンボス金型サンプル。加飾金型で培ったデザイン性がツジカワの強み。

紙カップ断熱エンボス金型サンプル。加飾金型で培ったデザイン性がツジカワの強み。

――それを具現化したい、と。

辻川 私たちは100年以上前に創業してからコア技術の「彫刻」を磨き続け、「飾る技術」「切る技術」「形づくる技術」を高めてきました。しかし、生活者に届ける商品をつくるのは、私たちの役割ではありません。私たちだけで思いつく技術の生かし方も限界があります。だから多種多様な企業と出会い、色々な夢や目標、悩みを聞いて、ツジカワの技術を生かせる場面を増やしていきたい。ツジカワの技術者は「できない」と言わず、「どうすればできるか」を考える頼りになる存在ですから、私は色々な企業に声を掛けることができるんです。

――多様な企業と出会うために「TOKYO PACK 2024(東京国際包装展)」に出展するのですね。

辻川 あまり知られていませんが、ツジカワの技術を生かせるケースは多くて、これまでも多様な職種の方々と出会い、新しい仕事を生み出してきました。例えば、パッケージ系ですと、マーケティング関係の方はもちろん、工業デザイナーなどのクリエイティブ職の方と意見を交換し、新しいチャレンジが生まれています。一方、工場の関係者とは、高精度のダイカットロールや受治具などによる生産性向上などに取り組んでいます。ダイカットロールは、紙・フィルム・不織布などの資材を任意の形状に切るためのロール状の刃型です。TOKYO PACKに向けては包装に関係する色々なダイカットロールの準備を進めています。受治具は、主にホットスタンプ、パッド印刷、シルクスクリーン印刷時に使用される成型品に合わせた高精度の商品です。しかし、精度だけではなく、現場の作業性を考慮して設計しており、3Dモデルの作成、電気制御やエアー駆動を組み込んだ治具設計も対応できますから、生産性改善のソリューションを柔軟に提案できます。

各種ダイカットロールや治具。工場の生産性向上や商品への機能性付加のために使用される(クリックすると各製品を紹介するツジカワのホームページ各種ダイカットロールや治具。工場の生産性向上や商品への機能性付加のために使用される(クリックすると各製品を紹介するツジカワのホームページが表示されます)が表示されます)

各種ダイカットロールや治具。工場の生産性向上や商品への機能性付加のために使用される(クリックすると各製品を紹介するツジカワのホームページが表示されます)

――パッド印刷・ホットスタンプ・ロール転写など特殊印刷の総合メーカー、ナビタスマシナリーとの共同提案も、ツジカワの強みの一つです。

辻川 ナビタスマシナリーは21年12月31日にツジカワの100%子会社になりました。100年企業グループの価値を生かして、採用活動に力を入れることで、中途、新卒を含めて優秀な人材が集まり始めています。人材の強化は、未来に向けて成長するための先行投資ですから、組織に新しい風が吹き、ビジネスの動きも活発になっています。23年11月、ナビタスマシナリーとして久しぶりに新製品の「VS-5 サーボ直圧式ホットスタンプ機」を発売しました。サーボモータ駆動とタッチパネルを組み合わせた操作性が優れており、圧力調整が100分の1ミリメートル単位で可能、タッチパネルで楽々設定、熱盤の下降速度が自由に設定可能、メモリ機能によりスタンプ条件の再現性アップなど、たくさんの特徴があります。多品種小ロットにも適しており、化粧品・トイレタリー分野にもオススメです。既存設備の更新を考えている企業から問い合わせが届いており、手応えはありますね。

ナビタスマシナリーの新製品「VS-5 サーボ直圧式ホットスタンプ機」

ナビタスマシナリーの新商品「VS-5 サーボ直圧式ホットスタンプ機」(クリックするとVS-5を紹介するナビタスマシナリーのホームページが表示されます)

――彫刻技術の認知拡大の一環として、23年からJPDA(公益社団法人日本パッケージデザイン協会)主催の日本パッケージデザイン学生賞に協賛。ツジカワ賞を設けましたが、状況はいかがでしょうか(https://student.jpda.or.jp/)。

辻川 日本パッケージデザイン学生賞は、学生からパッケージデザインを募集して選考するコンペティションです。協賛企業の一部は企業賞を贈呈することができます。私たちのツジカワ賞は、最終選考に残った作品の中から独自に選定・贈賞しており、副賞として、ツジカワの技術を最大限に活用して作品を具現化する機会を提供しています。23年のツジカワ賞には、専門学校日本デザイナー学院の伊東未夢さんの作品「扇子(せんこ)ちゃん」を選びました。伊東さんが考えた作品コンセプトは「日本の伝統芸能・文化において欠かせない扇子であるが、その殆どは消費者に柄をイメージ図などで確認してもらう必要がある。そんな問題を解決するため、本体の柄を一目で認識できるパッケージデザインを考えた。そこで浴衣の持つ、扇子と一緒に使う場面が多い・柄が似かよっている・夏を感じさせるという特長に着目し、浴衣の柄として本体を覗かせた。このパッケージは、扇子の魅力である柄を生かしたビジュアルで消費者の目を惹き、購買欲を高め、日本人や海外の方が日本文化をひらくことを叶える」で、共感を覚えました。

――伊東さんの受賞作『扇子ちゃん』は、どのように具現化しましたか。

辻川 外部企業に依頼して作成した扇子に、ツジカワが箔押ししたのですが、それは弊社シニアアドバイザーの渡邉克宏さんが担当。ツジカワ入社前は大手印刷会社製造部門でパッケージ印刷に携わり、箔押しだけではなく、紙・印刷機など紙器全般に対する幅広い知識を持っています。箔押しの問題は、なんでも解決してくれます。並行して扇子を収める箱も作製しました。伊東さんに立ち会ってもらい、箔色の指示は伊東さん自身が行い、色々なパターンで約50枚の箔押しを行いました。箱をブック式にするか、かぶせ式にするのか。目隠し部は紙が貼り付けてあるが、同様にするべきなのか。扇子に箔押しをするか、どの部分を箔押しで表現するかなど、多種多様な難題がありましたが、伊東さんを中心にツジカワの現場が試行錯誤を重ね、8カ月の製作期間をかけて完成にこぎつけました。ツジカワの技術を未来有望のクリエイターに知ってもらえたこと、そして現場の技術者に新しい気づきを与えられたことに満足しています。

日本パッケージデザイン学生賞2023にてツジカワ賞を受賞した「扇子ちゃん」(※クリックすると「扇子ちゃん」を紹介するツジカワのホームページが表示されます)

日本パッケージデザイン学生賞2023にてツジカワ賞を受賞した「扇子ちゃん」(※クリックすると「扇子ちゃん」を紹介するツジカワのホームページが表示されます)