サントリーウエルネスが満を持して2024年6月13日に発売した機能性表示食品「セサミンバイタル」が狙い通りの成果を上げつつある。もともと同社はシニア層に強い商品ラインアップを展開し、健康食品では断トツのシェアを獲得。次のステップとして40代、50代のミドル世代を取り込むことで、事業基盤の強化を狙っている。売り上げは非開示だが、トライアル獲得はもちろん、本品購入も好調に推移。ミドル世代の顧客獲得は順調に進んでおり、トップシェア企業の競争力は高まっている。

「セサミンバイタル」の成功要因は三つある。一つ目は商品力が高いことだ。セサミンバイタルに含まれるセサミン類とアスタキサンチンは、活性酸素を除去し酸化を抑制する優れた抗酸化作用がある。疲労感の軽減、寝覚めの改善をサポートする。ヒト試験の結果、実際に加齢に伴い疲労感を感じやすくなっている健常な中高年の日常生活で一時的な疲労感を軽減する機能が報告されている。また疲れを感じている人を対象に解析した結果、セサミン類を含まない食品を摂取したときに比べ、セサミン類を摂取したときの方が、寝覚めにおいて有意な改善が認められた。アスタキサンチンの抗酸化力は、β―カロテンの4.9倍、緑茶カテキンの560倍、ビタミンCの6000倍もの強さがある。「セサミン類との組み合わせの有効性を精査して800素材の中から選び抜いた」とサントリーウエルネスヘルスケア事業部1G(セサミングループ)の日比谷浩行「セサミンバイタル」ブランドマネージャーは説明する。増えすぎると疲労感の原因につながると言われる活性酸素。その一つである一重項酸素を除去する酵素は、ヒトの体内では生成されない。そのため、日常生活で抗酸化成分を積極的に補うことにミドル世代は反応している。

二つ目は巧みなプロモーション戦略だ。ミドル層は疲労感が強く出始める頃だ。例えば、子育てと仕事の両立は男女を問わず至難の業。このような日常生活のマルチタスク化は、ミドル層の心身に負担をかけており、誰もが軽減を願っている。このインサイトを踏まえ、サントリーウエルネスは「サビを取る成分で疲労感を軽減」というキャッチコピーを考案。「サビ」は、抗酸化成分への認知・拡大が即座に進むワード。それを俳優の田中圭を起用したプロモーションで一気に訴求した。体力をスマホの充電にたとえ、「オレの充電が切れる5時過ぎ」「オレの充電がMAXにならない」というメッセージは、ミドル世代の共感を呼んだ。「購買のトライアルを集計すると、疲労感軽減というコミュニケーションが功を奏している。そして私たちが一番大事にしている効能効果の体感に結び付いている」(日比谷ブランドマネージャー)。

サントリーウエルネスは大胆な権限委譲でミドル世代を攻略。顧客基盤が一段と強くなり始めた

三つ目の成功要因は販路拡大だ。これまでは直営サイトでの通信販売にこだわり、CRMを徹底することで、ビジネスを急拡大してきた。今回は、直営サイトに加え、一部ECチャネルやドラッグストアなどの一般市場での販売に踏み切った。40代、50代への認知拡大がスムーズに進んだのはもちろん、即購買の流れも生まれ、売り上げ拡大に寄与している。

実は隠れた成功要因は人材活用にある。「セサミンバイタル」チームは全員30代。ターゲットのミドル世代のインサイトを探求するために、事業基盤強化の難題を若い社員に託した。この権限委譲こそ、企業が次の時代を切り拓く推進力を生む。「セサミンバイタル」のヒットから学ぶべき点は多い。

月刊『国際商業』2024年11月号掲載