ライオンの啓蒙活動はマイナス1歳からの口腔ケア
オーラルケア分野の2強が市場活性化策を打っている。リーディングカンパニーのライオンは11月1日、オーラルケアメディアセミナー「プレママの歯科健診のメリット」をオンラインで開催。妊娠期は口腔リスクが高まりやすいことを説明し、妊娠中に歯科健診を受診する重要性を発信した。一方、サンスターは年末年始商戦において「ガム」「オーラツー」の店頭販促を強めている。
ライオンは過去1年以内に第1子を出産した女性を対象に調査を実施。「妊娠期にお口の状態は変化しましたか」という問いに対し、69%が「変化はない」と回答した。しかし、論文によると、妊娠中に歯肉炎を発症している人の割合は約60%とも言われ、妊娠中にお口の状態に変化が起きても、自分では気づいていない可能性が示唆された。
また、「“胎児への影響がない”ことがわかったら、または“歯科医院が妊婦さん向けに特別な配慮をしてくれる”ことを知っていたら、妊娠中に歯科健診を受けたい気持ちに変化はあったと思いますか」という質問には、72%が「高まった」と回答。妊婦歯科健診の受診を促進するためには、胎児に影響するのではないかという不安を解消することがポイントであることがわかった。
日本歯科大学附属病院マタニティ歯科外来の鈴木麻美准教授は「妊娠期のお口の中のリスクと歯科健診のメリット」について説明した。妊娠期は歯周病の悪化や妊娠関連歯肉炎の発症など口腔環境が悪化するものの、胎児への影響を懸念して、歯科受診を控えるケースがみられる。鈴木准教授は「歯科治療のX線撮影は安全で、歯科治療時の局所麻酔薬は妊娠全周期に使用できる。飲み薬も歯科医師が最小限で使用している」と話し、妊娠期の歯科治療の安全性や対処法を伝えた。
「マイナス1歳からの口腔ケア」として、妊娠前からの定期的な歯科健診の重要性も指摘。妊娠期間の歯科健診のメリットについては、「口腔内の疾患の早期対応につながり重症化を避けることができるとともに、生まれてくる赤ちゃんの口腔内のこと(歯の萌出時期、栄養、う蝕予防、歯磨きの方法など)を質問することができます」(鈴木准教授)と話した。
さらに「かかりつけ歯科医院を持つことがとても大切」(鈴木准教授)と強調。歯科医院を選ぶ基準として、気軽に相談できる歯科医師・歯科衛生士がいることや、自分だけでなく赤ちゃんや家族のことも相談できること、通いやすいことを挙げた。
ライオン歯科衛生研究所の歯科衛生士・久保田好美氏は「プレママの歯科受診の実態と歯科健診のメリット」について説明した。厚生労働省の調査によると、妊婦の歯科受診率は約35%と低いことがわかった。一方、ライオンの調査では、妊婦歯科健診の受診者の約70%が満足していることが分かった。
妊婦歯科健診を受診しない理由としては、体調が悪いことや治療以外で歯科医院を受診する習慣がないことが挙がるが、「妊娠期は口腔リスクが高まりやすい。出産後は育児などで自分の時間が取りにくいため、妊娠中に歯科受診することが大切」(久保田氏)と指摘した。
妊娠期のセルフケアのコツについても、体調の良い時間に磨くことや、嘔吐感が防げるヘッドが小さい歯ブラシで磨くこと、歯磨きできない時はマウスウォッシュを活用すること、低刺激の歯磨き剤を選ぶことを紹介した。
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